さくらんぼの実る頃
街のあちこちで、さくらんぼの甘い香りがただよっている。さくらんぼの女王といわれる「佐藤錦」は、シーズンがわずか2週間ほどしかないため、値段も張る。
本体価格で1パック800円から1000円のものが良く売れている。贈答用は、1箱8000円から1万5000円が主流だ。
「さくらんぼの実る頃」という歌がある。
作詞者のジャン・バチスト・クレマンは、詩人で社会主義者であり、パリ・コンミューンの指導者でもあった。1871年3月、ヴェルサイユ軍に包囲されたコンミューンで、負傷した戦士たちを介抱していた若き看護婦ルイーズに、クレマンはこの歌を捧げた。
コンミューンはわずか2カ月で崩壊して、戦士たちの多くは「血の週間」と呼ばれる大虐殺で命を落とし、ルイーズもまた犠牲となった。
普仏戦争の敗北とコンミューンの崩壊の中、失意にくれる市民たちの間で歌われ始めたのが、この「さくらんぼの実る頃」だった。
以来、この歌はフランスの労働者や下町の人々のシャンソンとして、歌いつがれている。
宮崎駿監督の「紅の豚」の中で、ホテル・アドリアーノの美しいマダム・ジーナが、「さくらんぼの実る頃」を歌っている。
ジーナ役の声優は加藤登紀子さんで、映画の中で切々と歌い上げるこの歌は、アニメ史上に残る、というよりも日本映画史に残る絶唱といっていい。
お登紀さんの夫は元学生運動の活動家で、お登紀さんと獄中結婚したことはよく知られている。
マダム・ジーナになりきってこの歌を歌うお登紀さんには、コンミューンの戦士たちと夫がどこかで重なっていたに違いない。
その夫は、2年前の7月、享年58歳で肺がんのため他界した。
さくらんぼの実るこの季節、お登紀さんはきっと、この歌を口ずさんでいるのではないか、と僕は想像する。
(以下は、歌詞の一部を日本語に直訳したものだ)
私は、さくらんぼの実る季節を、いつまでも愛するだろう。
私の心に傷口が大きく開いたのは、この季節からだった。
たとえ幸運の女神であっても、私の苦しみを閉ざすことは、決して出来ない。
私は、さくらんぼの実る季節と、心に抱くこの思い出を、いつまでも愛するだろう。
朝刊1面最初の3文字 朝日‥「27日」 毎日‥「年9%」 読売‥「人事院」 日経‥「日立製」
本日の地球 中国・蘇州で世界遺産委員会始まる。花を浮べて流れる水の、明日の行方は知らねども‥(昭和15年、「蘇州夜曲」より)
21世紀の残り日数 35250日
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コメント
上記エントリを参照させていただきました。
事後報告になってしまいますが、
ありがとうございます。
大変興味深い内容でした。
投稿: 綿 | 2005/03/30 01:48