この世界で起きていることは、夢のまた夢
露とおち 露と消えにし わが身かな 難波のことも 夢のまた夢
僕は昔から、このあまりにも有名な秀吉の辞世の歌に、強く惹かれるものを感じてきた。
秀吉ほどの成功を収めた者が、最後に到達した「夢のまた夢」の境地こそ、この世の本質であり、彼は最期の瞬間に、この真理をさとったのだろう。
これに関連して思い出すのは、2年前に新聞に載ったエルサレムのある医師の話である。
その医師がある時、窓の下の通りを見ながら、知り合いの日本の大学教授に言った。
「ご覧なさい。大勢の人が歩いているが、これは夢だ」
医師によれば、いまこの国にいることも、自分が医者であることも、すべて夢なのだそうだ。
夢というのは、かりそめの姿、とどめおくことの出来ないもの、ほどなく消えてしまうもの、拘泥しても無意味なもの、などいろいろに解釈できる。
この世のもろもろの出来事も、うつろう一瞬の幻影であり、いずれすべてが無に帰していく。このことは、文明の寿命の短さからも裏打ちされる。
まして個々人の命の短さ、一生のはかなさたるや、いかなる財力と権力を手に入れたとしても「夢のまた夢」を乗り越えることは出来ない。
日本の男性最長寿の109歳が亡くなったと、ニュースにある。最も長く生きて109歳とは、なんと人生とは限定的なのかと思う。
夢のまた夢ですら、その夢の中にいる期間は、たかだか70年か80年なのだ。
夢の中にいるうちが花。夢が終われば、永遠に続く無。それこそが夢でない本来の現なのかも知れない。
(追伸:「21世紀の歩き方大研究」の新世紀つれづれ草に、『時間の岸辺から』第58回 「1.29ショック」をアップロード。これは欧州の邦人向け日本語新聞「英国ニュースダイジェスト」に同時掲載)
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本日の地球 人質の人命優先か、米国の要求優先か、板ばさみで苦しむフィリピンのアロヨ政権。日本では人質とその家族への大バッシングで、自衛隊撤退を求める声は消された。日比のあまりの違い。
21世紀の残り日数 35234日
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