ボリショイ・サーカス、一瞬の失敗乗り切りに感動
有明コロシアムで公演中の、ボリショイ・サーカスを見に行ってきた。
僕はサーカスの醍醐味は、失敗するかも知れないという、まさにその一点に尽きると思っている。
絶対に失敗しないコンピーター制御のような完璧なサーカスだったら、それはサーカスではない。
今公演の目玉であるバランス・アクロバットは、空中に固定された丸テーブルから上にのびる2本のポールの上で、逆立ちで演ずる難しい芸だ(撮影禁止のため、この写真はパンフレットからのもの)。
逆立ちした男に、地上の女性が積み木のようなブロックを放り上げ、男はヒョイと片手で取ると、ポールに積む。ブロックは次々と放り上げられ、男は逆さの格好のまま、手の下に積んでいく。
手をついているポールに5個、もう片方のポールに4個のブロックが積まれ、最後となる10個目が放り上げられた時、男はつかみとることが出来ず、その上、バランスを崩して、すべてのブロックが崩れて地上に落ちてしまった。
客席は凍りつく。逆立ちしたままの男と、地上の女がロシア語で緊迫の会話をしている。カーテンの後ろからマネジャーのような男が出てきて、何か叫んでいる。
どうやら、もう一度最初からやり直すらしい。
男の方はずっと逆立ちのままだが、再び1個目のブロックから投げ上げられて、次々に積まれていく。
さきほど失敗した最後の10個目。客席からアーッという声が上がる。
男はまたもや取ることが出来なかった。
しかしこんどは、ほかのブロックは崩れることなく、取り逃した10個目のブロックはなんと空中のテーブルの上にひっかかっている。
男は、テーブルに落ちたブロックをつかもうと手をのばすが、あとわずかに及ばない。
こんどは地上の女性もどうすることも出来ない。
そこで男は、積み上げたブロックの一個を取って、それを「道具」にしてテーブルのブロックを少しずつ引き寄せ、横になっていたブロックを「道具」を使って慎重に縦にする。
これでギリギリのところで手でつかむことが出来、10個のブロックを無事にポールに積んで万雷の拍手を浴びた。このすべての動作は、当然のことであるが、空中で逆立ちしている格好のまま行われた。
失敗した時の対処方法については、さまざまなケースを想定して訓練を繰り返しているのだろうが、ピンチに臨んで冷静に対応して無事に乗り切った今回の様子は、リアルな緊迫感に包まれていて、一度で成功したよりずっと感動的だった。
人間の真価は失敗しないことにではなく、失敗や危機をどのように乗り切るかにあるのだと思う。
朝刊1面最初の3文字 朝日‥「横浜市」 毎日‥「自民党」 読売‥「原子力」 日経‥「金融庁」
本日の地球 猛烈な暑さが伝統となっているロンドンの地下鉄が、百数十年の歴史で初めて冷却システム導入へ。来年夏前の設置めざす。紳士にも温暖化は耐えがたし。
21世紀の残り日数 35228日
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