いくたびも[ ]の深さを尋ねけり‥‥どんな言葉を入れる?
いくたびも[ ]の深さを尋ねけり
何かで読んだ話だが、女子高の授業で、この[ ]のところに、どんな言葉をいれたら良い句になるか、生徒たちに自由に書かせてみた。
その結果、最も多かったのは、次の句だったという。
いくたびも愛の深さを尋ねけり
ケータイやメールで、「私のこと、どのくらい好き?」と何度も尋ねている様子が目にうかぶ。
ここにどんな言葉を入れても、それなりの句が出来るから面白い。
いくたびも秋の深さを尋ねけり
いくたびも空の深さを尋ねけり
いくたびも夜の深さを尋ねけり
いくたびも闇の深さを尋ねけり
いくたびも霧の深さを尋ねけり 寺山修二の、身捨つるほどの祖国はありや、の雰囲気。
このあたりまではいいが、いくたびも眠りの深さを尋ねけり、となると、だれがだれに尋ねているのか、アヤシクなる。
「シメシメ、熟睡しているようだな」「音を立てるなよ」と、ドロボウたちの忍びの図か。
いくたびも欲の深さを尋ねけり 日本中いたるところ、政治家も役人も企業人たちも。強欲列島の図。
この句は正岡子規の
いくたびも雪の深さを尋ねけり、が元の句だ。
外はしんしんと雪が降っている様子だが、病気で寝ている子規には、それを見ることが出来ない。
看病に来た妹に、なんどもなんども、どのくらい積もったかを尋ねている。
動けない子規にとって雪こそは外界の象徴であり、雪が降るという現象の中に、子規は宇宙のとてつもない営みを感じ取ったのではないか、と僕は想像する。
雪は、生きたいという子規の渇望の具象化であろう。
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