神戸・メリケン波止場の連凧
今日は昼前に、阪急電車で京都から神戸へ。去年秋に阪神−ダイエーの日本シリーズを見に甲子園に行って以来、1年ぶりの神戸だ。
去年はスケジュールがきつく、あまりゆっくり出来なかったが、今回は時間がたっぷりある。
幸い天気もいいし、のんびりと神戸港の方へ歩いていく。浜風が気持ちよく、海の香りをたっぷり吸い込んで陶酔する。
メリケン波止場で、長〜い連凧を揚げているおじさんがいる。一瞬、連凧を売っているのだろうか、と思う。
約60個もあろうかという凧の一つひとつに、文字が書いてある。なんだろうか。
「震災」という文字が読める。おじさんの手元から、空に向かって、凧の文字をつなげて読んでみる。
「大震災お見舞い申し上げます」
「亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします」
「神戸っ子は負けません」「みんなで元気を出して頑張ります」
なんという言葉だろうか。こんな凄い連凧は見たことがない。おおぞらに揺らめく文字を見ていると、なんだかジーンときて、涙が出そうになる。
メリケン波止場に憩う10組ほどのカップルたちは、時折、凧を振り返って見上げているが、文字まで読んでいるのかいないのか。
おじさんは、だれかが見てくれるかどうかには全く無頓着な様子で、黙々と凧を揚げ続ける。
約15分ほどのおおぞらのメッセージは、この世のものとも思えない優しい力に満ちていて、僕はこの連凧が現実のものなのかどうか、一瞬、分からなくなったほどだ。
おじさんは、ゆっくりと凧を回収すると、ていねいに箱にしまい、自転車に積んで、なにごともなかったように、どこへともなく去って行った。
まるで別の世界から、阪神大震災の被災者たちを見守り続けているような、不思議なおじさんだった。
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