岡本喜八監督死去、「大誘拐」は最高傑作だった
岡本喜八監督が食道がんのため、81歳でなくなった。
「日本のいちばん長い日」は見たには見たが、どんな内容だったのかほとんど覚えていない。
強烈な印象を受けたのは、1991年の「大誘拐」だ。
北林谷栄演じる82歳の大金持ちのお婆ちゃんが、風間トオルら3人のチンピラに誘拐される。
誘拐されたお婆ちゃんは、しだいにチンピラたちを操って主導権を握っていく。
ついには身代金を自分で100億円と決めて「ビタ一文負からへんで」と宣言し、チンピラたちは「お婆ちゃん、ムチャクチャ言いおる。だいいち、百億なんてどないして運ぶんや」と真っ青になる。
北林谷栄の好演は特筆すべきだが、振り回される県警本部長の緒形拳、お婆ちゃんたちをかくまう樹木希林もなかなかいい。
お婆ちゃんはテレビ局を手玉に取り、全国に自分の姿と声を生中継させることに成功。そして、前代未聞の現金100億円の受け渡しへ。
岡本監督は、コミカルなシーンを随所に交えながらも、正面から堂々とこの誘拐ドラマを描いていて、ドキュメンタリーのようなテンポの速い迫力で、観るものを釘付けにする。
お婆ちゃんの豪邸には、戦死した3人の息子の遺影が額に入れて飾られている。「お国って、なんやろなあ」とつぶやく姿が、誘拐劇の主導権を握るに至ったお婆ちゃんの気持ちを表している。
ビデオでも何度となく観たが、何度観ても面白い最高傑作である。
岡本監督のご冥福をお祈りいたします。合掌。
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