イノシシと思って撃ったら‥忠臣蔵のような話が
五段目で運がいいのは猪(しし)ばかり、という川柳がある。
この五段目というのは、歌舞伎の仮名手本忠臣藏五段目のことである。
歌舞伎通の方なら目をつぶっていても筋が思い浮かぶだろうが、ここで基本的な流れをみてみると‥
夜の山崎街道で、早野勘平が千崎弥五郎と出会って別れる。
与市兵衛(勘平の女房お軽の父)が雨宿していると、ヌッと現れた斧定九郎に刺殺されて50両を財布ごと奪われる。
(チチチチチチチと緊迫した三味線の音をバックに、財布を口にくわえた定九郎が黒羽二重のすそで血に染まった刀を落ち着いて拭う。この場面は、悪党の魅力たっぷりでゾクゾクする)
イノシシが現れて走り回り、追ってきた勘平が鉄砲で撃つ。イノシシは逃げ、弾は定九郎にあたって死ぬ。
その後、勘平は自分が舅を撃って殺してしまったと錯覚して、腹を切って死ぬ。
弥五郎も討ち入り後に切腹して死ぬ。
というわけで、五段目の登場人物4人はすべて死ぬことになり、死ななかったのは運よく弾が当たらなかったイノシシだけというわけなのだ。
昨日の新聞に、この五段目を思わせるニュースが載っていた。
茨城県で猟をしていた2人の男が、畑でイノシシを見つけて3発を撃って仕留めた。
ところがイノシシと思ったのは、民家の飼育場から逃げていたブタで、このブタを河原で解体して持ち帰った2人の男は書類送検された。
このブタはなんと運が悪いんだろう、と思う。飼育場からようやくのことで逃げ出したところを、イノシシと間違われて撃ち殺され、解体されるとは。
茨城で運が悪いはブタばかり、では川柳にもならないが。
(表の新着情報:「21世紀の歩き方大研究」の新世紀つれづれ草に、『時間の岸辺から』第72回「はなこさん襲来」をアップロード。これは欧州の邦人向け日本語新聞「英国ニュースダイジェスト」に同時掲載)
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コメント
ahahaさんの記事、拝読いたしました。たくさん引用していただいて光栄です。13年前の「朝のガスパール」連載当時を思い出すと感無量です。あの4日間を中心とした「いまだから語れる実名登場の真相」といった裏話を、いずれどこかでまとめておきたいと考えてはいるのですが‥
投稿: BANYUU | 2005/02/22 17:03
こんばんは。
こちらにもご返事をいただいて、有り難うございました。
数時間前に、アップいたしました。
なんか、あんなので、すみません。
投稿: ahaha | 2005/02/22 02:05
ahahaさん、「朝のガスパール」読了されましたか。それはそれは。そちらの「富豪刑事」での僕のコメント、なんなりと引用していただいて結構です。という返事は、ここに書いておいていいのでしょうか。
あっ、「忠臣蔵」TBありがとうございました。
投稿: BANYUU | 2005/02/21 16:10
BANYUUさん。
お尋ねあって、まかりこしました。
「朝のガスパール」、一週間ほど前に読了しました(^^V。
それで記事にしようと思うのですが、BANYUUさんが「富豪刑事」のところでくださったコメントを引用してもいいでしょうか?
(ということは、この小説がどうでこうでというのを全部すっとばして、このやりとりがメインになります)
実は、下書きは書いたのですが(--;、ご返事お待ちしてから、アップします。
追伸:橋本治の「忠臣蔵」TBさせてくださいませ。
投稿: ahaha | 2005/02/21 16:03