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2005/04/08

「砂の器」の野村芳太郎監督死去

「砂の器」の野村芳太郎監督が肺炎のため死去、85歳だった。

松本清張の小説を映画化した「砂の器」は、日本映画屈指の名作だった。(以下、ネタバレなので、まだ観てない方はご注意を)

とりわけ後半は圧巻だ。

捜査網がしぼられてきているのも知らずに、満員のコンサートホールでオーケストラをバックに、「宿命」をピアノで引き続ける加藤剛。

捜査会議で、刑事の丹波哲郎が朗々と解き明かす天才音楽家の過去。

「宿命」の音楽をバックに描かれる、加藤嘉と子役の春日和秀の言語に絶する辛い放浪の日々。

この3つが、渾然となって進行していくさまは、それまでの日本映画には見られないダイナミックな構成で、観客を釘付けにする。

父子の放浪シーンは、原作の小説ではほんのひと言しか書かれていないのだが、野村監督はこの部分を素晴らしい映像美で丁寧に描いた。

背景にあるハンセン病と差別は、現代でも解決されていない重いテーマである。

コンサートの成功を確信しつつ、ピアノを引き続ける加藤剛の姿は、人間が引きずっている宿命の重さ、消すにも消せない過去の厳しさを、余すところなく表している。

人間は、善か悪かで2分出来るほど単純ではない。暗い過去を内に閉じこめながら、過去の人生と戦いながら、それでも現在を生きていかなければならないのが、人間だ。

映画の冒頭の、子どもが砂で作った器が波であっけなく崩れてしまう映像は、きわめて象徴的だ。

この映画で野村監督が描こうとしたのは、人が生きていくことの危うさであり、辛さであろう。

野村監督のご冥福をお祈りいたします。

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