尼崎のJR事故はなぜ防げなかったのか
尼崎で起きたJR福知山線の事故は、死者50人、負傷者数百人という大惨事になったが、なぜこれほどの惨事になってしまったのか、大いに疑問だ。
昔はフェイル・セーフという言葉がよく使われていたが、最近はあまり聞かない。
要するに、人間系のミスであれ、ハード系のトラブルであれ、どのような失敗が発生しても、システムが必ず安全側に働くようにしておくという発想だ。
東海道新幹線を作る時には、このフェイル・セーフという原則が徹底され、たとえ走行中にいかなるトラブルが起きても、自動的に緊急ブレーキがかかって列車を止めるように設計された。
今回のJRの事故では、ATS(列車自動制御装置)が、赤信号での進入に対して停止させたり先行車両に近づき過ぎた時にブレーキをかけるだけで、スピードオーバーには対応しない最も古いタイプのものだったという。
このような古いATSがそのまま使われていたこと自体、大きな驚きだ。
今回の場合、運転士が遅れを取り戻そうとスピードを上げても、ATSがブレーキをかけなければならないのはもちろんだが、たとえ脱線しても線路から大きく逸脱しないようなバックアップが必要だったと思われる。
フェイル・セーフをあまりいわなくなったのは、技術への過信か慣れなのか。
よく引き合いに出されるハインリッヒの法則は、この事故にもあてはまる。
1つの重大事故の背景には、29の軽度の事故があり、さらに300のヒヤッとするニアミスがある。
こうしたニアミスを軽視せずにひとつひとつ手をうってつぶしていくこと、そしていまいちどフェイル・セーフの原点に立ち戻ることが必要ではないか、と思う。
(表の新着情報:「21世紀の歩き方大研究」の21世紀エッセイ「時間の岸辺から」に、「魔の日に起こる鉄道事故を避ける方法はあるか」をアップロード)
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