出生率減を覆い隠す数字のトリック
厚生労働省が発表した04年の出生率(合計特殊出生率)は、前年と同じ1.29で横ばいだという。
この「横ばい」という政府の発表にマスコミは安心しきって、去年のように「1.29ショック」を大きく取り上げることなく、危機感もさほど感じられない。
しかし、この「横ばい」は数字のトリックである。
小数点以下3位を四捨五入しているから、1.29で同じに見えるが、実際には出生率は減少を続けている。
去年発表された1.29は、より詳しくは「1.291」である。
しかし今回発表された1.29は、より詳しくは「1.289」であり、初めて1.28台となっている。
厚生労働省は02年に、出生率は07年に1.306で底を打ち、2050年にかけて1.39にまで回復する、と説明していた。
去年、1.29になった時も、ミレニアム婚による出産ブームが一段落したことによる一時的な減少に過ぎない、と厚生労働省は説明していた。
出生率低下が一時的どころか、歯止めのかからない雪崩現象の様相を呈しているのに、政府も政治家もそして経済界も危機感は薄い。
日本の人口は06年がピークで07年から減少に転じるといわれてきたが、実際には今年がピークあるいは去年がピークですでに減少を始めている、という見方も出ている。
自己責任が強調され、格差が広がって2極化しつつある日本。国家としての覚悟を勇ましく語り、戦争すら辞さない強い国家を目指そうという動き。このような中で、女性たちが子どもを生む気持ちになりにくいのは当然だ。
GDPを上回る700兆円を超す国債を抱え込んで、もはや世界でも最悪クラスの財政破綻国となっている日本は、少子化と人口減によって、国家消滅への道を加速度的に進んでいるような気がする。
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