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2005/06/23

いしいしんじ「ポーの話」を読んで

img0081いしいしんじの2年ぶりの長編小説「ポーの話」(新潮社)を読み終えた。

現代小説をほとんど読まない僕が、いしいしんじの世界に引き込まれたのは、「麦ふみクーツェ」(理論社)によってだった。

その時は、たまたま新聞の書評が目にとまり、その中で「どこか宮沢賢治の世界を思わせる。宮崎駿のアニメを思い出したりもする。あるいはブラッドベリのファンタジーも」と書かれていたことから、即座に買ってきて読んだ。

以来、僕はいしいしんじにすっかりはまってしまい、「ぶらんこ乗り」(理論社)、「トリツカレ男」(ビリケン出版)と、作品を立て続けに読んでみた。

今回の「ポーの話」は、これまでの作品の中で最も読み応えがあり、「麦ふみクーツェ」のメルヘンのような世界をもっと広げて、川の流れに沿ったようなダイナミックな物語展開が、読むものをぐいぐいと引き込んでいく。

主人公のポーは、泥の川の中で働くおおぜいのうなぎ女たちに育てられた少年である。

舞台は、どこにも存在しない無国籍の奇妙な街なのだが、その光景やポーと出会う人々は、夢の中で出会ったことがあるような不思議な懐かしさを帯びている。

この街にある日、500年ぶりの大豪雨が襲い、ポーは次々と数奇な体験を重ねていくことになる。

ポーの体験するさまざまな出来事は、それぞれが独立した物語にもなっているのだが、全体の流れは終盤にかけて意外な展開となっていく。

底流に流れるものは、生きるということの漂流性であり、清濁がまじりあったこの世界へのいとおしさ、のようなものだろうか。

最後にポーはどうなったのか。これは読む人それぞれの解釈が成り立つくらいに、幅を持った不思議な書き方になっている。

読み終えた後もしばらくは、切ない気持ちと救われた気持ちが交錯しながら、余韻にひたってしまう。

現実世界のリアリズムを離れて、あり得ない世界の中を主人公たちとともに漂流してみたいという人には、イチオシでお奨めの本だ。

この本についてのほかの方の読後感: みつまめ&たけのこ読書日記 みきにっき

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コメント

コメントとトラックバックをありがとうございました。初めてコメントを頂いたのでうれしかったです。『ポーの話』は手塚治虫の『火の鳥』のようだ、と思いました。

青山ブックセンターでいしいさんの講演会があって、『ポーの話』についても話していました。とてもいい話で私は涙ぐんでしまったくらいです。また日記に書こうと思いますので、見にいらしてくださいね。

『21世紀の歩き方大研究』またゆっくり見にいきます。とりいそぎ、お礼でした。

投稿: みつまめ | 2005/06/24 11:57

こんにちわ。
TBとコメントをありがとうございました。

「大切なもの」と「償い」

「ポーの話」の中で、いちばんのテーマなのではないでしょうか?

両方を理解したときの「ポー」の行動。
すべてが、切なかったです。

投稿: みき | 2005/06/24 13:35

★みつまめさん、こんにちは。確かに手塚治虫の『火の鳥』と共通するものを感じますね。僕は後半、『銀河鉄道の夜』を思い出したりもしました。いしいさんの講演会、聞きかかったです。また日記に書いて下さいね。時々のぞいてみようと思っています。

★みきさん、こんにちは。「大切なもの」と「償い」。現代に生きる僕たちが見失ってしまったものかも知れませんね。ポーがこの2つを、懸命に理解しようとしていく過程は、心を揺さぶられます。終盤は切ない中にも、光明を見る思いです。今後ともよろしく。

投稿: BANYUU | 2005/06/24 14:53

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『ポーの話』 いしいしんじ   みつまめ★★★★★ いしいしんじさんの新作です。 私は彼の大ファンなので、もう無条件に受け入れてしまう。 ポーはうなぎ女の子ども。 うなぎ女とは、うなぎをつかまえて生計を立てている黒い女たちのこと。 町の泥の川を泳いで育ったポーは、ある日500年に一度の大洪水に流されてしまう−。 行き着いた先は? そこで出会った人たちとは? たったさっき�... [続きを読む]

受信: 2005/06/26 04:03

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