自分が裁判員なら、林真須美被告は死刑か?
和歌山カレー事件の控訴審判決で、大阪高裁は一審に続いて林真須美被告に死刑を言い渡した。
僕はこの事件の発生当初から、林真須美被告が真犯人であることを自明の前提としたマスコミ報道や、その流れに乗ったかのような審理のあり方に、どこか危ういものを感じている。
今回の二審でも、最もナゾに包まれている動機部分の解明が出来ておらず、動機目的不明のままの死刑判決となった。
この問題について、僕は「表」サイトの「つれづれ草」に去年6月18日付けで「カレー事件の林被告は本当にクロなのか、3つの大きな疑問」という記事を書いた。
その要旨をここに再掲しておきたい。
週刊誌が「平成の毒婦」とまで呼んだ林被告の性格や人格が、たとえいかに社会常識をはずれたものであったとしても、それとシロクロとは別物だ。
僕は、事件の調書などを読んだわけでもないが、おおざっぱに言って、3つの疑問を感じる。
第1は、カレーにヒ素を入れた動機だ。近所の住民から冷たい態度をとられて激高した、というのは、4人も殺す動機としては弱すぎる、というのが常識的な印象ではないだろうか。
第2は、カレー鍋にヒ素を入れることが出来た人間を一つ一つ消去法で除いていって、最後に残ったのが林被告であり、林被告以外にヒ素を入れることが出来た人間はいない、というのは死刑を宣告するだけの説得力を持つだろうか。
第3は、そしてこれが最も大きな問題だと思うのは、カレー事件が発生しなければ、林被告による保険金詐欺事件はおそらく永遠に明るみに出ることもなく、また保険金目当てとされるヒ素による殺人未遂事件も決して疑われなかっただろう、という点だ。
これらの事件が発覚する危険を犯してまで、一時の激高からカレー事件を引き起こすことは、犯罪者の心理からいってもあり得ないように思う。
もしも、林被告をワナにはめて地獄に突き落としてやろうとたくらむものがいたならば、これほど完璧な状況設定はない。林被告がヒ素を入れたという証拠もないけれども、林被告にはアリバイがなく、圧倒的に不利な立場に置かれているのだ。
ヒ素を入れることが出来たのは林被告しかいない、という論理に落とし穴はないか。まさかと思うような人物が、決定的なウソをついているか何かを誤魔化している、ということはないのか。
この事件が、裁判員制度の導入後に審理がされていたら、裁判員たちは林被告に死刑を言い渡すことが出来るだろうか。
僕が裁判員だったら、林被告が犯人である可能性が大きいとしても、そうでない可能性がわずかでもある以上は、疑わしきは無罪という裁判の大原則を貫くほかはない。
あなたが裁判員だったら、死刑判決を出せるだろうか。
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