反対する人々を徹底殲滅する時代思潮
僕は自民党支持者ではないのだが、小泉首相による郵政法案反対議員への徹底的な叩き潰しには、これからの日本が進む息詰まるような時代の色が見え隠れするように思う。
小泉首相はこれを機会に、自民党という一つの党組織を、多彩な色彩が渾然となったアバウトな集合体から、一つのはっきりした色彩を鮮明にした戦闘集団に変えようとしているのだろう。
それはいわば、自民党の「民族浄化」作戦であり、反対者への容赦ない粛清による反対の芽の掃討である。
このいわば異様な雰囲気を伴った「右向け右」の組織強化は、自民党の中だけのコップの争いならば、笑ってみていられる。
しかし、僕の感じでは、どうもこれは日本の国民全体の中にあるもやもやとした鬱積を背景に、社会全体に伝染していく時代の病のようなものになりつつあるような気がする。
その一つが、NHK受信料不払いの人は、NHKの公開番組に応募しても参加させないという、NHKが打ち出した驚くべき決定だ。
まったく異なる次元の話であるにもかかわらず、刺客を差し向けて郵政反対議員の殲滅をはかることと、受信料不払い者を公開番組から締め出すこととは、あまりにもその精神構造が似通っていて気味が悪いほどだ。
それは、お上のやること、政府の方針、法律が定めたこと、等々に反対し続けたり従おうとしない一般市民に対し、国や公的機関からの支援や恩恵を受ける道を断ち切り、徹底的に締め出しをはかっていくことに道を開きかねない。
例えばこんなことが考えられる。年金未加入の者については、災害時の避難所生活を断る。学校など公的行事の場で君が代斉唱をしなかった者は、公営住宅に入居させない。
生活保護を支給する時には、政府の基本方針に反対するような行動や言論は慎むという誓約書にサインさせる。
有事の際に国防に協力する意思表示をしなかった者は、敵国からの侵攻に対して保護の対象からはずす、等々。
権力を信奉する者にとって、反対する邪魔者どもを一掃することほど魅力的なことはない。
その誘惑にとりつかれて、越えてはならない水域に入り込んでいるのではないか。そんな危惧が募ってくる。
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