広島原爆投下60年と、一つの数式
今日は広島への原爆投下60年で、ヒロシマを中心にさまざまな式典や行事が行われている。
これについての僕の感慨は、表の「時間の岸辺から」に書いたが、ここでは関連して別な話を書く。
僕が初めてヒロシマの原爆ドームや平和記念資料館を訪れたのは、ちょうど10年前の1995年、阪神大震災と地下鉄サリン事件があった年の秋だった。
その時、平和公園周辺のさまざまな慰霊碑やモニュメントなどを見てまわったが、僕が驚きを持って見たのは、平和大橋のところにある広島市立第一高等女学校原爆慰霊碑だ。
第一高等女学校の1、2年生は、この日、建物疎開作業中に被爆して、職員と生徒679名が死亡した。
僕が強い印象を受けたのは、慰霊碑のレリーフだ。中央のモンペ姿の女学生が「E=mc^2」(注:実際には2乗をあらわす2は、cの右肩上に小さな文字で書かれている)という、あのアインシュタインが発見した質量とエネルギーの関係式を手に掲げ、両側の女学生が中央の女学生を慰めている。
この碑には、あなたは原子力の世界最初の犠牲として人類文化発展の尊い人柱になったのです、という意味の説明が書かれている。
僕は、核兵器廃絶に関するさまざまな特集記事を見回しても、核エネルギーの本質についての、こういう冷静で科学的なとらえかたというのは、ほとんどお目にかからない。
なぜ核兵器を使用してはならないのか。それは、この関係式の持つ重大性にある。
c^2というのは、光速×光速である。それに質量をかけたものがエネルギーに変わるわけで、ごくわずかな質量が戦慄すべき多大なエネルギーに変わり得ることを示している。
E=mc^2は、人類が決して弄んではならない究極の関係式なのだ。
(表の新着情報:「21世紀の歩き方大研究」の21世紀エッセイ「時間の岸辺から」に、「人類初の原爆投下から60年に思う、地獄の姿」をアップロード)
| 固定リンク
コメント
Rough Toneさん、こんにちは。8月6日が誕生日とは、おめでとうとばかりも言えないものがありますね。
僕の私見ですが、宇宙のさまざまな星で発生する知的生命体は、どれも核分裂エネルギーを発見したところで、その制御に失敗して滅亡していくのではないでしょうか。
E=mc^2をコントロールして発達し続けている文明は、この全宇宙に数個くらいしかないように思います。
投稿: BANYUU | 2005/08/06 17:52
こんにちは
じつは8月6日は私の誕生日でもありまして、ほんの幼い頃から、この日がどういう日なのかということは親に教えてもらってきました。
広島には、この日に近い夏の日を選んで、平和公園を中心にもう何度も足を運んだのですが、この碑についてはまったく知りませんでした。この次行くときは必ず見てみようと思います。
核分裂の次は、核融合、そしていつか物質そのものを崩壊させてエネルギーに変えようという時代が来るのでしょうか。それとも、その日が来る前に人類は核によって滅びてしまうのでしょうか。
投稿: Rough Tone | 2005/08/06 17:34