« 白熱電球と青色LEDのブレンドツリー | トップページ | 愛知万博の冷凍マンモスを、ゆったりと見てきた! »

2005/12/09

広い宇宙に地球人しか見当らない50の理由、を読んで

今日のブログは、「表」の21世紀エッセイ「時間の岸辺から」と連動して同じテーマについて書く。

2日の記事でちょっと触れた「広い宇宙に地球人しか見当らない50の理由」(スティーヴン・ウェッブ著、青土社)を読んでの感想である。

なお、以下の内容にはネタバレがあるので、この本をこれから読もうと思っている方や、途中までしか読んでいない方は、ご注意いただきたい。

これは、「フェルミのパラドックス」について、現在までにさまざまな科学者や思想家、哲学者から出されている解を50に分類して考察したものだ。
フェルミのパラドックスの要旨は、この本では次のように説明されている。
「この銀河系には、地球外文明があちこちにいるはずだ。ところがその兆しは見えない。彼らはどこにいるのか」

著者は、これまで出されているさまざまな解を、49通り挙げて考察を加え、最後に著者自身の考え方を50番目として書いている。

この本が前提としているパラドックスの中軸は、銀河のあちこちに文明があるとすれば、そのうちの長寿の文明の中には、銀河全体の殖民に乗り出しているものもあるに違いない、というものだ。

本当にそうだろうか。この点について僕の考えは、「表」の21世紀エッセイ「時間の岸辺から」に書いたので、ここでは触れない。

さて、著者の出した50番目の解は、「銀河系の中で、知的文明はわれわれだけである」という意外な結論である。

ここにいたるまでの49の解について、実に科学的な推論を展開してきた著者が最後の最後に、地球以外に知的文明は存在しない、と結論付けているのは、あっけない幕切れという感じだ。

「われわれの地球はこの広い宇宙の中でなんら特別な存在ではない」というコペルニクス原理あるいは平凡原理を踏まえて考察を続けてきた著者自らが、それに反する帰結を導き出しているという違和感は小さくない。

僕は、著者のこの結論は、読者の反発を十分に計算に入れた意図的な挑発であり、それなら読者であるあなた自身はどう考えますか、と読者に問いかけているのだと解釈する。

この本と併行して読んだ「宇宙 起源をめぐる140億年の旅」(ニール・ドグラース・タイソン&ドナルド・ゴールドスミス著、早川書房)の中でも、最後に「フェルミのパラドックス」について考察している。

こちらでは、次のように説明している。

「ある特定の時代に銀河系に数千の文明が存在するとしたら、隣の文明までの平均距離は、最も近い恒星までの距離の1千倍、すなわち数千光年にもなる。もしその中の少なくとも1つの文明が数百万年存続しつづけたら、彼らはわれわれに向けてすでに信号を送っているか、あるいはわれわれのささやかな通信傍受行為によって正体を現しているはずだろう。しかし、どの文明もそこまで長い間存続しないとしたら、お隣さんを見つけるのはさらに困難になるだろう」

僕は、こちらの説明のほうに説得力を感じる。

それに、人類がほかの知的生命からの信号を探し始めてから、まだ40年ほどしか経っていないのだ。

読者挑発という意図があるにせよ、スティーヴン・ウェッブのように性急な結論を出すのは、あまりにも気が短すぎるという気がする。

地球の文明があと数千年続くとしても、その存続中に他の文明を探し当てることが出来れば幸運、といったところではないだろうか。

(表の新着情報:「21世紀の歩き方大研究」の21世紀エッセイ「時間の岸辺から」に、「広い宇宙に地球人しか見当らない50の理由」をアップロード)

|

« 白熱電球と青色LEDのブレンドツリー | トップページ | 愛知万博の冷凍マンモスを、ゆったりと見てきた! »

コメント

Rough Toneさん、こんばんは。TBとコメントありがとうございました。
ドレイクの方程式の記事、興味深く読ませていただきました。この方程式の中核は、銀河系の中にいま存在している文明の数Nが、文明の平均的存続期間Lをどのくらいに見積もるかによって、大きく変わってくるところにあるのですね。
そちらの記事のコメントにもちょっと書きましたが、N=Lと見る人は多いようです。すなわち、通信出来る文明の存続期間が1万年ならば、銀河系に今現在1万個の文明があり、存続期間が1000年ならぱ現在1000個の文明がある、というぐあいです。
1000個ならば隣の文明までの平均距離は数千光年から数万光年になって、文明の存続期間1000年の間にコンタクトを取れる確率は極めて小さくなります。
僕は個人的には、文明の平均存続期間は1000年程度で、地球の場合は平均の半分も持たないのでは、と思っています。

投稿: BANYUU | 2005/12/12 22:34

 BANYUUさんのエントリを拝読して「ドレイクの方程式」のことを思い出したので、それについて書いた記事をトラックバックさせていただきました。

 ブログにも書きましたが、文明が自滅せず長続きしていれば、いつか異星の知的生命体とコンタクトすることもあるだろうと思いたいものです。人類がまだ他の惑星の知的生命体と出会わないのは、まだ地球人類は知的生命としても技術的にも未熟だからなのだと。でも自滅してしまうような文明は、宇宙にあふれている他の生命と出会う資格はないということでしょうね。

 以前、タイガースについてのエントリにコメントを頂きながら、旅行中であったためお返事できず申し訳ございませんでした。

投稿: Rough Tone | 2005/12/12 20:59

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 広い宇宙に地球人しか見当らない50の理由、を読んで:

» ドレイクの方程式 [Passing Strangers]
 BANYUUさんのブログ「裏・21世紀の歩き方大研究」の「広い宇宙に地球人しか [続きを読む]

受信: 2005/12/12 20:50

« 白熱電球と青色LEDのブレンドツリー | トップページ | 愛知万博の冷凍マンモスを、ゆったりと見てきた! »