空き缶を自転車で運ぶリサイクルおじさん
近所に、空き缶をリサイクルするための集積所がある。
集積所といっても、歩道のところに空き缶を入れるプラスチックの大きなケースが並べられていて、みんながそこに、持ち寄った空き缶を入れていくのだ。
この青いケースには、区役所の名前が書いてあるので、区のリサイクル事業のようだ。
だんだん溜まっていく空き缶は、どうやって収集するのか不思議に思っていたが、今日、その収集の現場を通りかかった。
一人のおじさんが、大きなビニール袋のようなものを広げて、ケースの中の空き缶をどんどん詰めていく。
空き缶でパンパンに膨れ上がった袋は、回収車のようなもので運ぶのかと思ったら、なんとおじさんは、この袋を自分の自転車の後部荷台に必死でくくりつけているではないか。
おじさんおじさん、いくらなんでも、こんなに大きな袋を自転車で運ぼうって、無理だよ。
しかしおじさんは、乗用車の幅ほどもある巨大な袋を自転車にくくりつけ、さらにその上にもう一つの袋をしばりつけて、よろよろとこぎ出す。
これはもはや、空き缶の袋をくくりつけた自転車というよりは、自転車をくくりつけた空き缶の袋といったほうがいい。
おじさんは、この状態で歩道をのろのろと進む。
交差点では車道に出て信号待ちをしている。
このおじさんは、区の委嘱の人なのだろうか。次の集積所に寄って、この上にさらに空き缶の袋を積み重ねるのだろうか。
自転車で運ぶところが、いかにもリサイクルの仕事といった風情だ。
エネルギーと資源の大量消費社会に背を向けて、黙々と自転車をこぐおじさんの姿は、つかの間の冬の日差しが生み出した都会の幻想のように、すうっと視界から消えていった。
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コメント
僕も最初、このおじさんは区とは無関係に勝手に空き缶を持っていってるのかな、とも思ったりしたのですが‥。見るからに質素な格好のおじさんで、腕章もバッジも制服もなく、自転車には区の仕事であることを示すような標識もありません。
しかし、集積所のケースから袋に入れているところは、実に悠然かつ堂々としていて、空き缶を1個も残さずきれいに回収していくあたりは、当然の仕事をしているまで、といった威厳さえ感じられます。
区の正式に委嘱なのかは分かりませんが、少なくとも何らかの共存関係が成立しているような感じを受けました。
投稿: BANYUU | 2006/01/19 13:21
こんにちは。いつも拝見しております。
そんな”おじさん”、私の地元でも見かけます。
「ビン・カン」の収集日である土曜日にだけ姿を表す、そんな人…あの人って、依託職員だったんですかっ!?
私はてっきり、収集所から勝手に、お金になる(?)空き缶だけを抜き取っているおっさん…かと思っていました…だってみなさん、あまりにもその格好が…アレで。
「リサイクルの仕事だから自転車で。」は、そう言われてみれば説得力があります。
しかし「依託されています。」を証明するバッジとかユニフォームやら何やらを見たことは無いし…はたしてそんな”おじさん”の真実は…。
投稿: かんげ | 2006/01/19 12:40