愛ルケ終了で思い出す「朝のガスパール」最終回
日経朝刊に連載していた愛ルケが、今日の446回目で終了となった。
タイトルの「愛の流刑地」という言葉が、最後の1行に出てくる。
この1行を書きたいがための446回であったか、とは言わない。
不倫の愛欲に溺れて後戻りできなくなった、中年作家と人妻の愛の営みのすべてが、愛の流刑地そのものであったのだ、と解釈したい。
新聞連載小説の最終回でいまも強烈な思い出となっているのは、今から14年前、1991年から翌年にかけて朝日新聞に連載されていた筒井康隆さんの「朝のガスパール」最終回だ。
1992年3月31日、161回目のこの最終回は、「それではフィナーレ。各レベルへと去っていく登場人物とお世話になったかたがたへのTHANKS・TOを含め。敬称略でいってみようか。GO!」という冒頭の3行の後、文章は一切なしで、なんと241人もの人名が延々と並び、最後の「完」の文字になる。
ここに書かれている人名は、小説の中のさまざまな虚構のレベルに登場してきた人物や、この小説と連動して設置されていたパソコン通信専用会議室に書き込みを続けた人たち、など、架空、実在を問わず、ステージのカーテンコールのような感じになっている。
はからずも、この連載の108回目から111回目まで、連続して4日間も実名登場するはめになった僕の名前もある。
僕の名前の2行ほど後には、ドストエフスキー、トルストイ、エミール・ゾラの名前も見える。
筒井さんにして初めて可能だった、人名だけを並べた前代未聞の最終回であった。
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