神隠しに遭ったマフラー
昨年の12月、真冬のような厳しい寒さの中で、前の冬が終わる時にしまっておいたマフラーを取り出そうとしたのだが、これが見つからない。
いったいどこにしまったのか。およそ考えられるさまざまな場所を、すみずみまでひっくり返してみたが、どこにもないのだ。
東急ハンズの売り場で、一目ぼれして買ったグレーに黒の横じま柄で、とても気に入っていたのに。
あきらめきれずに、押入れの上の棚からスーツケースの中まで、再三に渡って探し回ったが、神隠しに遭ったように、マフラーは忽然と消えてしまった。
仕方なしに、ハンズに行ったが、同じ柄のものがあるはずもなく、やむを得ず別なマフラーを買って、厳冬をしのいでいた。
ところが‥
♪ さがすのをやめたとき みつかることも よくある話で
きのう、クリーニング屋さんに行ったら、店のおばちゃんが言うのだ。
「ちょっとねえ、持ち主が分からなくて困っているのがあるのよ。心あたりない?」
おばちゃんが店の奥から出してきたのが、クリーニング済みのビニール袋に入ったマフラー。
おお、これだ。これこれ。ずーっと探していたんだよ。
「あら、よかった。じゃ持っていって。ごめんなさいね」と、おばちゃん。
去年の3月からずっと店にあったのだという。
なんでいまごろになって、と不思議な気もするが、ともかくも出てきたことで、よしとするしかない。
神隠しに遭ったマフラー。節分を前に、鬼がそっと出してくれたのかも知れない。
(表の新着情報:「21世紀の歩き方大研究」の21世紀エッセイ「時間の岸辺から」に、「ヒューザーをコペルニクス的ばか者とは、卓越した表現」をアップロード)
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