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2006/04/04

鉄の鎧をまとった巻貝、どうやって進化した?

このところ、僕が最も強くひかれたニュースは、鉄の鎧をまとった巻貝が江ノ島水族館で公開された、というものだ。

アメリカのチームが2001年に、モーリシャス沖のインド洋深海底で発見した貝で、スケーリーフットと名づけられた。

岩にへばり付く腹足の部分が、硫化鉄の鱗で覆われていて、カニなどの外敵から身を守っている。

この巻貝は、鉄の鱗を作れば、外敵から身を守れるということを、どのようにして知りえたのだろうか。

かりに、何らかの知恵が働いて、鉄で鱗を作れば、固い鎧となって生き延びるのに好都合だと判断することが出来たとしても、実際に硫化鉄で鱗を作るのは至難のワザであろう。

僕は進化論についてはあまりよく分からないが、突然変異と適者生存だけで、長い時間をかければ、巻貝が鉄の鎧を獲得するほどに進化が進むものなのだろうか。

鉄の鎧に至るまでの最初のステップはどのようなものだったのか。

まずは、突然変異によって腹足の表面の「皮膚」の部分に硫化鉄が混じりこむ? しかし、このような突然変異が自然の状態で起こるものだろうか。

かりに、最初の一歩が実現できたとしても、その程度では適者生存に役立つとは考えられず、同じ方向での突然変異を数多く重ねて、あるていどの硬さを持つ硫化鉄の鱗を持つようになる必要がある。

地球上の生命の進化については、僕たち人類はまだそのメカニズムとプロセスをほとんど知らないに等しい。

この巻貝が、鉄を利用するという知恵を持ったことは驚異であるが、よくよく考えてみればわれわれ人間を含めて多くの動物は、血液の中の酸素運搬役として、鉄を実に巧妙に利用している。

赤血球の中のヘモグロビンを構成する鉄が酸素と結合し、いわば錆びた形になって体内に流れ、酸素を供給し続けている。

血が赤いのは、突き詰めると鉄の色なのだ。

もっと驚くことがいろいろある。人体には、ごく微粒ながら金が使われている。

携帯電話に金が使われているからといって驚くことはない。僕の体内にも、あなたの体内にも、金は不可欠な微量貴金属として使われている。

あまりにも微量なために、火葬した後の骨や灰から金を回収することは、とてもじゃないが不可能なのだ。

鉄の鎧を獲得した巻貝に思いをはせると、人間のたかだか数千年の文明など、あまりにも小さいという気がする。

まして、ここ100年くらいの近代科学とテクノロジーなど、硫化鉄の鱗を獲得するに至った巻貝の知恵と工夫に比べれば、小手先の子どもだましでしかない。

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