« 快晴のち雷雨のち鮮やかな虹 | トップページ | 実現可能性が出てきた影も出来ない透明マント »

2006/05/25

高校2年の夏、尾瀬・至仏で遭遇した落石事故

 【キャンベラ25日共同】15日に、両足を切断した人で初めて世界最高峰のエベレスト(8、850メートル)登頂に成功したニュージーランド人のマーク・イングリスさん(47)ら約40人が、頂上付近で倒れている男性に気付きながら救助せず、登山を続けていたことが分かった。男性はその後、酸素欠乏で死亡した。(共同通信)

ふと目にしたこのニュースが、僕に遠い遠い日のある出来事を、記憶の闇の中からよみがえらせてくれた。

僕が高校2年の時の夏だったと思う。

夏休みの課外活動の一環として、気のあった仲間たちを中心に、尾瀬・至仏岳への登山を行なった。

山頂付近にはまだ雪の残っている山で、僕がこれまで登山らしい登山をしたのは、この時1回だけだった。

どういうルートで登ったのかなど、詳しいことは全く覚えていないが、山頂で撮った写真が数枚、いまも手元にあるから、これは夢ではなかったのだろう。

この至仏登山では、忘れられない出来事が起きた。

参加者は10人ほどだったろうか。みな同じ高校の2年生の男子で、ほかに引率の教師が1人いた。

岩肌のかなり急な斜面を登っていく。僕たちの上にも、また僕たちの下にも、結構多くのパーティーが連なっていた。

突然、ゴーッという予期せぬ轟音が上から聞こえた。

まず小石がパラパラと落ちてきた。その上を見上げると、直径1メートル近くもある大きな岩が、僕たちめがけて転げ落ちてくるのが見えた。

引率の飯利先生が「ふせろーっ!!」と、みなに叫んだ。

僕たちは、反射的に頭を両手でかばうようにして、姿勢を低くした。

大きな岩は、僕たちをかすめるようにして、下の方へと飛ぶように落ちて行った。

仲間内には、だれもけが人はなかった。

これ以上の落石がないことを確認して、僕たちは再び登山を始めた。

山頂でのことはあまり記憶がないが、そこで飲んだジュースの美味しさといったら、筆舌に尽くしがたい。

しばらくして僕たちは下山を始めた。

その途中で、僕たちは愕然とするものを見た。

死人のような真っ青な顔をして意識のない男性が、急ごしらえのタンカーのような布に包まれて横になり、数人がかりでゆっくりと山から下ろされている途中だった。

さきほどの落石の直撃を受けた、というのだ。

この男性を運んでいるのは、男性と一緒に登っていた横浜のパーティーということだった。

僕たちは強い衝撃を受けたが、それ以上は手助けの仕様もないと判断し、「どうぞお大事に」と声をかけて、一行を追い越して下山した。

後で聞いた話だが、岩の直撃を受けた男性は、腕を切断する結果になったという。

この出来事があってからというもの、僕は登山は怖いものという思いが消えることなく、一度も登山をしたことがない。

冒頭のエベレストでの出来事のニュースを読んで、僕はふと、あの時のことを思い出す。

落石の後、登山を再開して山頂まで行った僕たちの判断は、あれでよかったのだろうか。

下の方でけが人が出ていることを、その段階では知らなかったのだから、やむを得なかったともいえる。

では、下山の時に、意識のないほどのけが人を懸命に下ろしている人たちを見ながら、僕たちが追い越して先に下山したことについても、やむを得なかったといえるだろうか。

もう何十年も前の出来事とはいえ、心の痛みなしに思い出すことは出来ない。

|

« 快晴のち雷雨のち鮮やかな虹 | トップページ | 実現可能性が出てきた影も出来ない透明マント »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/39504/10239023

この記事へのトラックバック一覧です: 高校2年の夏、尾瀬・至仏で遭遇した落石事故:

« 快晴のち雷雨のち鮮やかな虹 | トップページ | 実現可能性が出てきた影も出来ない透明マント »