伊勢丹本店、築80年の歴史建造物維持へ
ヨーロッパでは築200年から300年を経ている建物が、いまなお使われているのは珍しくない。
ところが日本は、国土が狭いせいなのか、古い建物を長く使う習慣が根付かないためなのか、築40年か50年そこそこの、まだ十分に使える建物を平気で取り壊して、ピッカピカの高層ビルに建て替えてしまうケースが流行のようになっている。
古きを軽んずるこうした風潮の中で、新宿の老舗デパートである伊勢丹本店は、築80年以上が経過して東京都の歴史建造物に指定されている本店の建物を、今後も建て替えることなく、耐震改修などの補強によって使い続けていく方針を打ち出した。
伊勢丹本店の伝統と風格を感じさせる本館東半分は、大正15年に建てられた「ほてい屋」ビルをそのまま使っており、現在の売り場はこれを西側に増築し、さらに新館とつなげている。
新宿の東口は、新宿高野、紀伊国屋書店、中村屋など、新宿の文化と街づくりを牽引してきた老舗が多いが、中でも伊勢丹本店の存在感は格別の重みを持っている。
近くに日本一の歓楽街歌舞伎町やゴールデン街があっても、新宿東口かいわいが落ち着きと安らぎを保っているのは、この伊勢丹本店が軽薄な建て替えをしてこなかったことが大きく寄与しているように感じられる。
新宿のデパートでは、11年前に南口に進出したタカシマヤを別にすると、西口の小田急と京王が築40年となっている。
このうち、京王はまだ具体的な計画ではないが、10年先を見越して全面立替の方向といわれている。
デパートではないが、東口ではすでに東映などの跡地が14階建ての新ビル建築中で、松竹会館も新ビル立替のために先日閉館となった。
伊勢丹本店が築80年以上の建物を使い続けることにしたのは、この建物が持つブランドイメージを壊したくないという配慮が大きいとみられている。
さらに、本店と通りをはさんで隣接する伊勢丹会館やその向かいの立体駐車場などを含めて、建て替えなくても売り場を拡大出来る余裕を持っていることも強みのようだ。
いずれにしても、大正時代の建物をこれからも使い続けるという伊勢丹の姿勢は、多くの人たちの支持と共感を得られるに違いないと僕は思っている。
日本は急激な人口減が少なくとも今後100年は続くとみられる中、築年数が長くなりつつあるほかのビルも、取り壊さずに耐震改修などで使い続ける道をもっと探っていくべきであろう。
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コメント
歴史的建造物は市民の共有財産なのだということを、伊勢丹のトップがよく分かっているのだと思います。ビルの安易な建て替え競争に歯止めがかかってほしいものです。
投稿: BANYUU | 2006/07/09 22:25
心強いお話ですねー
日本橋でさえ、、、ですから。
投稿: 秋葉OL | 2006/07/09 18:23