ウィーンからのモブログ08
ウィーンに来てから今日までに3つの美術館を回ったが、そのいずれでも強い光彩を放っていたのはクリムトだ。
ベルヴェデーレ宮殿上宮のオーストリア・ギャラリーでは、なんといってもかの「接吻」が圧巻だった。
「接吻」はやや照明を落とした部屋にガラスケースに入れて展示されていて、まさにウィーンの宝、オーストリアの宝といった扱いだ。
縦横180センチの正方形の絵は、装飾文様の色彩が輝くような光を放っていて、とりわけ金色は素晴らしい。
この絵の魔術に取り付かれたかのように、休憩スペースの隅で、若い男女の観光客が、「接吻」と全く同じポーズを作って人目をはばからずにキスをしていた。よくやるよなあ。
美術史博物館のクリムトは、展示室に飾られているのではなく、正面階段の上の多くの壁面絵画の一部としてはめこまれているので、とても見つけにくく、遠くから見上げるしかない。
さて僕が今日見に行ったのは、分離派会館セセッション地下のベートーベンフリーズである。
これは剥き出しの白壁の3方向いっぱいにクリムトが描いた壁画で、ベートーベンの交響曲第9番「合唱付き」をテーマにした異色の作品だ。
幸福への望みと戦い、襲いかかるさまざまな不幸と苦悩そして絶望。中でも醜怪なモンスターとその3人の娘の異様な姿は、一目見たら忘れられない。
こうして壁画は最後に、苦悩を超克して到達した歓喜を、クリムトらしく抱き合う男女の姿に象徴させて描いている(写真)。
僕の個人的な好みでいえば、このベートーベンフリーズこそがクリムトの最高傑作だという気がする。
BANYUU
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