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2006/09/01

「冬の旅」終曲に出てくるライヤーという楽器

そろそろ秋風に誘われて、一人旅に出たくなる時期になった。

旅といえば、古今東西を問わず、さすらいこそが、その真髄であろう。

高速交通機関に乗ってバス付きのホテルに泊まるような旅は、もはやさすらいと言えぬのかも知れない。

だが、そのような時代だからこそ、さすらいという死語になった言葉に、強く惹かれる気もする。

たまたま読んだ本の中に、シューベルトの歌曲集「美しき水車小屋の娘」と「冬の旅」は、いずれもさすらいをテーマにしていて、その雰囲気は対照的だ、というようなことが書いてあった。

何を隠そう、僕は生まれたこのかた、この二つの歌曲集を最後まで通して聞いたことがない。

「冬の旅」と言えば、「菩提樹」しか知らないのだ。

僕のビデオ棚を探してみたら、ヘルマン・ブライがシューベルトの三大歌曲集全曲を歌ったものがあった。

1997年に録画したまま、いったんは聞き始めたこともあったが、なんとなく難解な気がして最初だけで聞くのをやめて、そのままになっていた。

今回、聞いてみたら、歌とピアノが一体となった圧倒的な迫力にしびれてしまい、水車小屋は2回、冬の旅は5回、繰り返して聞いた。

僕はなぜ、何十年もの間、この世界に入り込むことが出来なかったのだろうか。

おそらく、僕にとっては、水車小屋や冬の旅の良さが分かるためには、それ相当の人生を生きる必要があったのだろうと、自己弁解をしている。

冬の旅の中で、とりわけ心を打つのは、1曲目の「おやすみ」と最後の24曲目「つじ音楽師」だ。

‥‥凍てつく氷の上で、だれも耳を傾ける者がいないのに、ライヤーを回し続ける老いた音楽師。

‥‥お盆の中は、いつまでたってもからっぽだ。

‥‥不思議な老人よ、お前について行こうか。僕の歌に、ライヤーを合わせることが出来るだろうか。

この印象的な終曲は、人によってどのような解釈でも可能なようだ。

シューベルト自身と老人とが重なって見える一方では、この老人は人生や老いというものを象徴的に具現しているとも見れる。

このライヤーとは何だろうか、と気になって、ネットで調べてみた。

最近はライヤーという名前で、小さな竪琴のような楽器が作られているが、冬の旅で歌われるライヤーは、非常に複雑な構造をした古楽器だ。

ハーディー・ガーディーという名前の方が通っていて、14、5万円ほどで販売されている。

ここではわずかな間ではあるが、その音色を聞くことが出来る。わびしく、物悲しい哀愁を帯びた音だ。

僕も、さすらいにはほど遠いが、そろそろ一人旅に出るとしようか。

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コメント

maruさん、コメントありがとうございました。その後、さっそくEねボタンを押したのですが、81Eねで100Eねに達せず、再放送の実現には至らなかったようで、残念に思います。

ところで、1997年8月31日にNHKで放送された芸術劇場「ヘルマン・ブライのシューベルト三大歌曲集(美しき水車小屋の娘、冬の旅、白鳥の歌)」を私が個人的に録画したVHSビデオテープが手元にあるのですが、昨日、ブルーレイ・ディスクにダビングしてデジタル化を終えたため、テープのほうは不要になりました。
VHSビデオテープでよろしければ、maruさんにお送りしたいと思っておりますが、いかがいたしましょうか。送付先などお知らせいただくことが出来るでしょうか。私のアドレスは、このブログの表サイト(プロフィル参照)に記載してあります。


投稿: BANYUU | 2012/09/25 18:25

突然のコメント、失礼いたします。
NHKに100名の賛同があると再放送を検討してもらえる番組リクエストのサイトがございます。私はプライが水車小屋の娘全曲を歌った1997年8月の芸術劇場をリクエストしています。もしできましたら、賛同をお願いできませんでしょうか。
賛同の方法はNHKの「お願い編集長」というページで、「お願い!検索」で「プライ」と入力して検索していただき、リクエストのページに入りますと、Eねボタンがありますのでクリックしていただくようになります。
(あるいはhttp://www.nhk.or.jp/e-tele/onegai/detail/4715.html#main_section)

伴奏者の名前など不明ですが、大変感銘を受けた放送で、YouTubeなどで探しても見つけられず、CD・DVD等はでていないかと思われます。
もしよろしければ、お力添えをお願いいたします。

投稿: maru | 2012/09/07 22:24

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