数十年ぶりに読むトルストイの「戦争と平和」
(写真=左が昔の全集版、右が最近出た文庫版)
このところ、巷の書店にあふれるベストセラーや新刊書には、ますます興味がなくなった。
ナントカ賞受賞の話題作などというものは、どうでもいいような身近な事柄をコチャコチャと書き連ねているだけで、人生の残り時間が少なくなってきた僕にとっては、読むだけ時間のムダであろうという気がしてならない。
では、何を読むべきか。これが難しい。
04年の暮れから05年にかけて、ドストエフスキーの「白痴」と「悪霊」を初めて読んだのは鮮烈だった。
去年は、これまで3回読んでいるドストの「カラマーゾフの兄弟」に、何十年ぶりかで4度目の挑戦を果たした。
視力の衰えたこの年になって、こうした長編の読書が可能になったのは、なんといっても一部の文庫本で、活字を大きくした新版を出し始めていることが大きい。
これらはいずれも、大きな活字になった新潮文庫で読んだのだ。
次は、「罪と罰」が大きな活字になったら再読したいと思っていて、時々書店の棚を見てみるのだが、いまだに小さな活字のままだ。
一昨日、新宿のジュンク堂が売り場を1.5倍に広げたというので、ぶらりと寄ってみた。
なにげに文庫本のコーナーを見ていたら、なんとトルストイの「戦争と平和」が、大きな活字になって新潮文庫から出ているではないか。
「戦争と平和」は高校1年の時、16歳の夏休みに読み通して以来、まったく読んでいない。
この間、映画ではヘプバーン主演のハリウッド版やボンダルチュク監督のソ連版を見ているので、あらましの筋書きは漠然と知っているものの、小説についてはほとんど覚えていない。
猛烈に分厚い文庫本で全4冊ある。3冊だったカラマーゾフをさらに上回る長さだ。
これを今から読むことが出来るかどうか自信はないが、ともかく1冊目だけを買ってみた。
大昔に読んだ河出書房新社の全集版「戦争と平和」もまだ、捨てずに本棚にある。
写真は左が、その時の全集版で、右が今回買った文庫版である。
活字の大きさの違いは歴然としている。
よく引用される有名な書き出しは、全集版では「さあ、いかがでございます。公爵」だが、文庫版は「ねえ、いかがでございます。公爵」で、「さあ」が「ねえ」になっている。
高1の時には、登場人物の人間関係を追うのが精一杯だったという印象が残っている。
あれから実に47年ぶり。久しぶりのナターシャに、胸を躍らせながら、いつの間にか1冊目の200ページまで読み進めている。
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