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2007/07/22

ロシアより愛をこめて送る13

ロシアより愛をこめて送る13
今日は、ペテルブルクに来てから最大のピンチに見舞われた。以下は、その顛末記である。

海外での一人旅にとって、奪われてはならない最も大事なものは何だろうか。もちろん命や体以外での話だが。

よくパスポートは命の次に大切だと言われる。現金やクレジットカードも奪われては大変だ。

僕は、その日使う以外の現金や航空チケットなどはホテルのセーフティボックスに預け、街を歩く時には胸ポケットにもズボンのポケットにも何も入れない。

パスポートと高額の紙幣はズボンのベルトにひもで結びつけた上で、服の内側にしまいこんで肌身に付けている。

財布や折りたたみ傘、ガイドブックなど、諸々のものを入れたショルダーバッグはタスキ掛けにして、その上から上着を着る。バッグがお腹の前になるようにして、手で押さえながら歩く。首からはストラップで吊したケータイを下げている。

朝10時前、そのいで立ちで、血の上の教会に向かった。教会の300メートルほどの手前で、ガイドブックを売る男たちが3人ほど近づいてくる。

ほかの観光客の姿はまばらで、危ないな、と感じた僕はバッグをしっかりと押さえながら早足で通り過ぎようとする。

一人の男が数冊のガイドブックをかざして接近してくるので、僕はニェット・スパシーバと断って、くぐり抜けるようにして、その場を脱出する。

100メートルほど歩いて、やれやれと安堵しながら、教会の写真を撮ろうとした僕は、愕然とした。

首から吊していたケータイがない!

ストラップは首から下がっているのだが、その先のケータイが外されてなくなっているのだ。

ストラップは盲点だった。丈夫な一本紐のように見えているが、途中で差し込んでロックする構造になっていて、差し込み部分の両側を指で挟むと簡単に外れる仕組みなのだ。

さあ、どうしたらいいか。ケータイには、ロシアに来てから撮った全ての写真や、それ以前に撮ったさまざまな大切な写真がメモリーに入っている。

それどころか、メールアドレスや電話番号、これまでに受信したメールの数々、など、すべての個人情報が入っている。

しかもケータイなしでは、この先、写真を撮ることもモブログをすることも、全てが出来なくなってしまうのだ。

先程のガイドブック売りを装った男は、僕の体には一切、接触していなかった。僅かの一瞬、僕が気付かないうちにストラップの差し込みを外すとは、信じられないテクニックである。

奪われた僕のケータイが闇ルートで売られ、さんざん世界各地に電話やメールをしまくったあげくに、僕には数百万円のケータイ使用料が請求されてくる。そんな悪夢のような事態が頭をよぎる。

まずは、先ほど被害に遭った場所まで戻ってみるが、もちろんあの男たちは影さえも見えない。

偶然なのかどうか、近くにパトカーが止まっていたので、僕は拙いロシア語を総動員して、数分ほど前にこのあたりでケータイを盗まれた、と訴える。

パトカーの中にいた4人の警官が出てきて、僕から事情を聞きながら付近を見て回る。

と、そのとき、背広姿の背の高い男が、どこからともなく現れた。ガイドブック売りとは別の男である。

なんと、左手には僕から奪ったケータイを持ち、右手にはケータイから抜き取った小さなSIMカードを持っている。彼は英語で言う。

「オレは、あの警官たちの仲間だよ。君が探しているのは、これかい。下に落ちていたのを拾ったのさ(ウソつけ!)。100ドルで返してあげるよ」

この野郎め、と思ったが、ともかくケータイを取り戻すのが先決だ。

僕は、ドルの持ち合わせがないがルーブルならある、と言い、男は「じゃあ3000ルーブルだ」と言う。

僕は「2000ルーブルでいいだろう」と値切り、向こうは「それでいいよ」と交渉成立。いやあ、こんなところで値段交渉をするはめになるとは思わなかった。

2000ルーブルは日本円で1万円ほどだ。高い授業料を払って貴重な教訓を得たと思えば安いものだ、と納得しながら男にカネを渡し、ケータイを返してもらう。

ちゃんと作動するかどうか確認する必要があるので、男に「ちょっと待ってくれ」と言って、SIMカードをケータイにセットし、パケット通信が出来る状態になっているか、などを確かめる。

メモリーも抜き取られてなく、どうやら大丈夫のようだ。

男はまた、ふっと風のように姿を消した。

不思議なのは、この間、警官たちは調べに来るでもなく、いつの間にかパトカーごと姿が見えなくなっていたことだ。

警官たちは全く頼りにならない。それどころか、もしかして警官もグルだったのか、と勘ぐりたくもなる。。いくらなんでも、まさか、とは思うのだが。

長くなったが、海外旅行で奪われて困るもののナンバーワンは、ケータイであることが今回の出来事で身を持って分かった。

パスポートならば盗まれても大使館や領事館で再発行してもらえるが、ケータイは再発行というわけにいかないのだ。

この事件に懲りた僕は、ストラップに吊したケータイをしっかりと握りしめて歩くようにした。

写真は、ケータイを取り戻した後、ほっとした気分で乗った運河巡りの遊覧船から見たペテルブルクの街。

BANYUU

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コメント

こんにちは。
いつもBANYUUさまのご旅行の写真、うらやましく拝見しております。
美しいです。

それにしても…大変でしたね。
確かにその状況…「警察もグルか!?」って思ってしまいますね。
一瞬でストラップを外して、気づかれずに持ち去るとは…そしてその後の手慣れた交渉まで…プロか!?っていうかプロなんてあるのか!?

海外に出かけると、日本の良さを再確認させられます。

お気をつけて旅の続きを!
記事の続きも楽しみにしております。

投稿: かんげ | 2007/07/26 18:23

かんげさん、こんにちは。レスが遅くなりましたが、昨日、帰国いたしました。まだ時差ボケ状態で、もとの日常に戻るにはしばらくかかりそうです。

ストラップのロックを一瞬のうちに指で挟んでケータイを奪い取るという手口は、マジシャンのような訓練を積んだベテランのスリ集団でなければ不可能でしょう。僕に接近して来た男は、5冊のガイドブックを掲げていましたから、片手で僕のケータイを握って、その手の2本の指でストラップのロックを外さなければなりません。僕は、男の脇を駆け足で通り抜けていて、いささかも立ち止まっていませんから、これはもう、相当厳しい訓練を積んで身につけた驚異のテクニックとしかいいようがありません。
この出来事によって僕は、スリの手口を甘くみていたことを猛省し、旅行中は慎重な上にも慎重を期して、厳重にガードを固めるようにしていたため、スリなどにつけこまれることはありませんでした。まあ、2000ルーブルを払って貴重な教訓を獲得したと思えば、納得出来ます。

投稿: BANYUU | 2007/07/31 21:48

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