ロシアより愛をこめて送る19
モスクワは朝から冷たい雨が降りしきる。雨のモスクワ。モスクワの雨。そんなタイトルの歌か小説があったような気がしてくる。
こういう日は、街の散策ではなく、美術館にどっぷりと浸るに限る。モスクワの美術館といえば、何はさておきトレチャコフ美術館であろう。
この美術館は、赤の広場やクレムリンがある一帯からやや離れているので、雨になるべく濡れないためにも地下鉄を利用する。
建物の外観は意外なほど簡素でつつましく、古代から20世紀までのロシア美術10万点を収蔵しているようにはとても見えない。正面の庭には、この美術館の創設者であるパーヴェル・トレチャコフ氏の像がある(写真)。
展示されている作品の中には、荒波の中を小船に乗り込んで難破船から必死に離れようとしている人々と、うっすらとかかる虹を描いたアイヴァゾフスキーの「虹」や、画の中から月光が光を発しているように見えるクインジの「ドニエプルの月夜」など、日本でも公開されて大人気を博した傑作が、ずらりと勢揃いしている。
ここは写真撮影が一切禁止と厳しいが、かえって作品の鑑賞に集中出来てよかったかも知れない。朝から見始めて途中、カフェでの昼食を挟んで夕方まで、たっぷりと楽しむことが出来た。
ロシア美術を集大成した美術館としては、ペテルブルクのロシア美術館と双璧をなす。どちらが良かったかということになると、もう甲乙付け難く、どちらももう一度、見て回りたいとしか言いようがない。
BANYUU
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