北新宿再開発地域にとどまった咳止地蔵尊
広大な地域に密集していた木造家屋や木造アパートを取り壊して、数年前から大規模再開発が進められている北新宿地区。
地上げが終わって、真新しい道路が貫通したこの地域の一角に、古い小さなお社だけが、取り壊されることもなくポツンと残っている、という話を06年5月4日のこのブログで書いた。
今日、春の陽気に誘われて、久々にこのあたりを散歩してみたら、なんとこれは淀橋咳止地蔵尊であることが真新しく設置された看板によって分かった。
ということは、お社や祠ではなくて、地蔵堂であったことを知る。そのお堂も看板と同じくらいピカピカに新造されていて、中にはみるからに古い感じのお地蔵さまが、布のようなものを頭から肩にかけて鎮座している。
お堂の脇の石碑には、こんな文字が読める
咳止地蔵尊
傳ヘ聞ク寳永五年十月廿四日當柏木二丁目二百番地東北隅ニ地蔵尊ヲ建立セラル 爾来二百四十有余年星移リ物変リタルモ霊験特ニ顕タカナリ 昭和十二年十一月道路改正ニ依リ現在ノ地ニ遷座シ崇敬常ニ厚シ 戦災ノ疫ニ遭ヒ焼失セルヲ遺憾トシ我等相企リ新ニ尊像ヲ建立堂宇ヲ復興セシハ是他ナシ 功徳ニ依ッテ一切衆生延命息災ニ町内ノ繁栄安全ヲ楽シミ未来ニ於テモ幸アレカシト念ズルニ在ル而已
昭和廿六年七月廿三日 淀橋地蔵講
1951年に建てられたこの碑文によれば、この地蔵尊は宝永5年(1708年)に建てられ、昭和12年(1937年)に道路造りのために今の地に遷座したが、戦災で消失。その後、尊像を建立し、お堂を復興した。
ということは、最初の建立から今年でちょうど300年周年にあたるのだ。
昔から、咳止めにご利益のあるお地蔵様として、地元の信仰を集めてきたのだろう。
ネットで調べてみると、咳止地蔵尊は、伊勢原市の渋田川にかかる「せきど橋」のたもとにもあり、こちらも地元の保存会による由来書きが立っている。
北新宿の咳止地蔵尊も、再開発事業が完成した暁には、気管支喘息など咳で苦しんでいる人たちの信仰を集める名所となっていくのだろうか。
咳止めにご利益があるのなら、花粉症も止めてくれそうなものだが、どうだろうか。
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