サヨリの天丼で春を食す
真夏に郷里の海で海水浴をしていると、目の前に口の尖った細い魚たちが群れをなして泳いでいることがよくあった。サヨリである。
人が大勢遊泳している中で、スイスイと泳ぎ回るその姿はまことに優美で、つかまえてやろうと手を延ばしてみるのだが、動きが素早くて触ることすら不可能だ。
サヨリは漢字で、細魚あるいは針魚と書く。僕は真夏の海でしか泳いでいるサヨリを見たことがないが、本来は春の魚とされている。
今日の日経新聞夕刊の彩時期には、サヨリは「魚介類きっての美人魚」だとある。
なるほど、美人魚とはよくいったものだ。
かつてサトウサンペイの漫画で、フジ三太郎だったかが、サヨリの尖った口先にキスをしながら、「サユリちゃーん」とささやいているところがあった。
ハートマークが飛んでいたか、目がハートになっていたか、どちらかだったと思う。
もうサユリであろうがサヨリであろうが、どっちでもいい三太郎クンの気持ちは分かる分かる。
去年秋のブログに、念願のハゼ天丼を食べた話を書いたが、最近その店にふらりと訪れたら、「サヨリの天丼作りますよ」とオヤジさんが声をかけてくれた。
ということで、メニューにはないのだが、サヨリ天丼を作ってもらう(写真)。サヨリが5匹も入っていて、野菜も3種。赤だし、お新香がついて1200円はお手頃だ。
ハゼ天丼もうまかったが、サヨリ天丼もまた至福の味である。
思わず僕も、「サユリちゃーん」とささやきたくなるような幸せな春の味であった。
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