今宵十三夜の月は、欠けたるが美なり
今宵は旧暦九月十三日にて、十三夜なり。
十五夜と云ふ響きの、完全、完成、達成など無欠なるを表はさんに、十三夜と云ふは達せざる様、完成に至らざる様にて、しのにあはれなる響きあり。
いにしへより、十五夜に月見したりぬれば、十三夜にもしかと月見すべきものと伝はれり。
十五夜にのみ月見するは片月見とて、うとまるることなりとぞ。
余はこれまで十三夜なんど意識せしこともなかりしかど、今宵は夕方から空を眺め居りき。
十三夜の月は、夕刻四時ころにははや東の空高く上りて、夕陽の西に輝けるに競ふがごとし。
陽が沈みてのち、とうとう暗くなりゆく空に、十三夜の月のさやかに欠けて満ち足らざるこそ、ひたぶるにいみじきことなれとぞ、うちおぼゆる。
西欧にては、月は不吉なりとて月見の習慣乏しと聞こゆ。
十五夜の月を愛でるは中国から伝はりけるが、十三夜は日本のみの風習なるらし。
不完全の中にこそ美を感じるは、まこと日本人ならではの感性なるらめ。
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