ばくだん丼を食らひて、名前の由来を詮索す
今年の夏過ぎぬるころより、余の食の嗜好しだいに変はりたり。
昼食には、以前ほど肉類摂らぬやうになり、魚介や野菜関係にぞ軸足の移れる。
最近、わりとしげく食するは、ばくだん丼てふ物騒なる名の食べ物なり。
丼飯の上に、生卵、とろろ、納豆、オクラの、ねばねば、ぬるぬるを一手に盛り込み、マグロの漬け2切れと海苔の載りてあり。
見るだに精力付くやうなる取り合わせにて、血気盛んなる若きころに食しなば、身を持て余すこと必定ならん。
余のごとき枯山水めきたる身には、むしろ老化防止に丁度良からむ、とぞ覚ゆる。
何故に、ばくだんなるやと調ぶれば、そもそも居酒屋には、ばくだんなるメニューの、ねばねば関係を一緒くたに盛りたるありて、そを丼飯の上に載せたればこの名付きたるらし。
昔、余が童なるころ、家にて夕食におでんを食らひしこと、いくたびかありき。その折、ばくだんなるおでん種ありしをいまも忘れず。
余の記憶、さだかにてあらぬが、油揚げなる巾着の、餅や卵なんどのさまざまな具入りたるを、ばくだんを呼びしやうに記憶したり。
しかるにいまネットにて調ぶれば、おでん種の、鶏卵または鶉卵を魚のすり身にて包みたるを、ばくだんと呼ぶとの説明多し。
余は、ふくろ、もしくは巾着と呼ばれる種のことを、ばくだんと勘違ひせしにや。
されどネットの中には、「油揚げの袋の中に餅や卵を入れたるをばくだんと言ふ」といふ説明も健在なり。
して得たり。こは余の記憶違ひにあらず。余が昔食せしばくだんは、やはり具の多き巾着にて、中に何の入るらむと、開くるが楽しみなりき。
けふ食らひしばくだん丼、なかなか美味にして、いまさら精力付くべき身にはあらねど、こころなしか血潮の騒ぐやうな心地するは、物狂ほしきことなれや。
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