新宿の地下道に、美しく青きクラゲたち舞ふ
街をすずろにありくに、思ひかけぬ物に出遭ふことのありけるを。
新宿通りの真下通れる地下通路に、何やらん、人のあまた集まりて、さめきたり。
見れば、通路の壁に大きなる水槽の2つ埋め込みたるありて、水中には青きクラゲどもの、みやびやかに舞へる。
通行人ら、つぎつぎと立ち止まりて、「こは本物なるは」「いみじう、さやかなるかな」なんど云ひて、ケータイのカメラぞ向けたる。
こは、何かの企画なるらしきも、さだかには覚へず。
余もしばし、ひたぶるにクラゲの舞になむ魅入らるる。
クラゲは、何をか考へて、かく舞ふぞ。
楽しきことや、辛きこと、クラゲにはありや。歓ぶことや、怒れることなんど、時にはあるにや。
何ぞの欲すること、クラゲには、ありやなしや。クラゲには、そも向上心や悩み事のたぐひの、あるにや。
水槽の外側より人にて見らるること、クラゲは知りたるや。
クラゲの一生は、幸せなりや、退屈なりや。
漢字にて書けば、クラゲは海月とぞ。美しくも儚く、哀しき字面なり。
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