秘蔵の宝物入れたるエトロの箱、瞬間接着剤にて補修
余の家に、ETRO(エトロ)の重厚にして高貴、かつ妖しげなる雰囲気の箱あり。
こは、阪神大震災の発生しける年の秋、神戸・元町のガード下なるアーケード街を、すずろにありきし折、たまたま見いだしたる箱なり。
店の主人曰く、こは数万円すべきブランドもののバニティケースなれど、水をかぶりたりけるによりて、捨て値にて放出するなりと。
定かにはあらねど、2000円程度なりけるとぞ記憶する。
余はこの箱に、我が家に秘蔵せる超レアなる宝物を保管することとしたりき。
この宝物とはなんぞや、と思ふらめど、余の家を訪れ来たるまれびとたちには、箱を開けたりて見てもらふことにぞしたる。
箱の形なむ、まさにあつらへたりけるやうに、宝物の大きさに寸分違はず適ひたり。
いみじう気に入りたる箱なれど、元町にて贖ひしより15年が経過し、このところ内側なるレザー、ほつほつと剥がれて、めくりゆけり。
外側はなにごともなきに、内側のみ剥がれゆくは、かの店の主人の云ひけるごとく、水かぶりたるに因るものなるや。
ETROの同じ箱なむ、いづくにてか入手可能なりやとネットにて調ぶれど、いまとなりてはひたぶるに困難なるらし。
オークションにて類似の箱、出品されたることあるらしきに、落札価格は中古にても数万円とぞ。
かくて余は、剥がれ始めたるレザーを、瞬間接着剤にて貼りなおすこととしたり。
接着剤こそ強力なればなるほど良からめ、と思ひて、3グラム550円なるScotchの強力瞬間接着剤を数個贖ひ来たりて、慎重に貼り付け作業を行なひたり。
接着作業は成功したりて、箱の内側ぞ元通りになりたりけるは。
されど、いでいで、接着剤の指に付きたるなむ、洗剤にて洗へど湯で擦れど、取れぬようになりたる。
接着力の強さ、身を持ちて厭といふほど知らされたる年の瀬なるぞかし。
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