2月逃げ月なにゆゑ逃ぐる、鬼に追はれて逃げむとや
1月行く月往ぬる月。2月逃げ月逃ぐる月。3月去る月別れ月。
毎年のことなれど、めぐり来る月日の中で、2月3日の節分のみは、1年ごとの間隔のいみじう短くて、などてか、と怪しき心地ぞする。
おなじやうに年中恒例の、ひいな祭りや、さくらの開花、お盆や正月なんど、ほかのことどもは、1年の間隔空きたるを、げにと実感せり。
節分から節分までの期間ぞ、1年よりひたぶるに短く感ずるは、おもひなしにしもあらず、こはまことに時間の歪みたるにや、と覚ゆる。
ダリの描きたりける、ぐにゃりと垂れ下がりたる時計のやうに、1年てふ時の流れの中にも、ワームホールのごと、間隔のせばまりたる箇所のあるらむ。
この歪みの拠りて来たるは、余の見るに、鬼にこそあらめ。
2月は、ほかの月より2、3日短きうへに、鬼に追はれて逃げるなめり。
逃ぐる2月を、鬼、うちとらへて日時を食ひに食らひて、ひたすらむさぼり食らふなり。
鬼に食はれたる2月は、28日在ると見ゆるは錯覚にして、空洞となりたるを、いかでか人の知る。
節分は、人間の時間を美味なる肴になして、鬼どもの呑み騒ぎ、歌ひ踊る饗宴の、オープニングなるぞかし。
この饗宴、年によりては5月、6月ころまで続くこともあるとかや。
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