けふは2.26事件から75周年なるは
けふは昭和11年(1936年)、陸軍皇道派の影響を受けた青年将校ら、1400余名の兵を率ひ、「昭和維新断行・尊皇討奸」を掲げて決起しけるクーデター(未遂)の、2.26事件より75周年なるとぞ。
余の手元には、2月26日発行(27日付け)の号外、および2月28日の夕刊、ともに現物のほぼ完全なる形にて保存されてあり。
号外は「青年将校けっ起す 重臣等襲はる」の見出しにて、
△首相官邸にて岡田首相即死
△齋藤内大臣は私邸にて即死
△渡邊陸軍教育総監は私邸にて即死
△牧野前内大臣は熱海伊東屋旅館にて行方不明
△鈴木侍従長は官邸にて重傷
△高橋大蔵大臣は私邸にて負傷
などの箇条書きが綴られたる簡素なるものにて、緊迫感溢るる号外なり。
一報にて即死と伝へられたる岡田啓介首相は、別人を銃殺したる反乱将校側の錯誤なりて、岡田首相本人は変装して脱出に成功したりて難を逃れたるとぞ。
号外にて負傷と書かれたる高橋是清蔵相は、死亡しけり。
2月28日の朝日夕刊は、1面トップに「今暁帝都に戒厳令」の見出しとともに、戒厳令および戒厳司令部令の勅令全文を、御名御璽の文字とともに掲載せり。
この日の夕刊紙面、事件関連の生々しき記事もさることなれど、ほかのさまざまの記事や広告にぞ、目を引かるる。
2面には「チャップリン日本へ向ふ」の記事あり。
3面には、シルヴィア・シドニイ主演、ウイリアム・ハワード監督のパラマウント映画「Gウーマン」の大きなる広告あり。日劇にて3月1日封切、入場料五十銭均一と書かれたり。
同じ面には新交響楽團の広告ありて、ベートーベン第九交響曲とエグモント序曲の演目を、日比谷公会堂にて2月28日限とあり。
帝都に戒厳令の敷かれたる中にても、かやうなる文化芸術の、からうじて息づきたるに、やがてこの国の戦争へと突き進み、米国映画や洋楽コンサートなんどの催すことの、ゆめ能はざるやうにならむとは、たれか予想しけむ。
2.26事件から75年と聞きて余は、はつか75年前のことなりて、さほど遠き昔にはあらざりけること、むしろ驚きなるぞかし。
いま75歳の人にとりては、その生まれし年のことなり。いま85歳の人にとりては、10歳の頃に起きしことなりけり。
2.26事件は、けして過去の出来事にあらず。昨今の内外情勢の混迷見れば、平成の二・二六事件いつ起きても不思議にあらざるは。
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