焼きたる鴨肉食らはむと見れば、いでや鴨の姿なるは
ちかごろはデパ地下ならずとも、スーパーの売り場にても、ときおり鴨肉のスライス並ぶを見かけるやうになりたり。
たまたま、1パック400円ほどの手ごろなるスライスパックあるを見て、贖ひ来たり。
フライパンにて簡単に焼きて、食らふうちに、ふと箸につまみたる一切れの、なにとはのう不思議なる形したるにぞ、しばし目の止まりたる。
怪しのことなるかな。この一切れのみぞ、ほかと異なりて脂身なく、なんぞの形にか似たると思はるる。
いでいで、目を凝らすにつれ、この一切れ、やうやうに鴨の姿になりたるは、まぼろしなるかうつつなるか。
スライスしける職人の、かやうなる戯れを、あへて為したりけるとも覚へねば、こは偶然の一致にほかならず、とや。
はたまた、鴨の怨霊の、スライス肉片に乗り移りて、食らはむとする人間に、生前の己の姿を知らしめむとしたるかとぞ。
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