今様の雪だるま、みなのっぺらぼうなるは
昨夜は、雪のいみじう降り続くを、朝にはいかほど積もりつらむと見ゆ。
つとめて、雪はとうにやみて、日の射し当たりたれば、シャーベット状に融け出したるに、光のきらきらと映へてまばゆきこと、なのめならず。
家のわたり、すずろにありき見るに、童らの為したるにや、ところどころに雪だるま様のかたまりぞ、こと家の軒下なんどに立ちたる。
どの雪だるまも、野箆坊(のっぺらぼう)なるは、いかなるにや。
いにしへの日日、雪だるま作りしころのこと、おぼろけに思ひ出せば、さなる訳の、おのづから思ひ当たるところあり。
いでや。われらはみな、雪だるまの、目、口、鼻、眉なむ、炭と炭団(たどん)にて作りたりける。
今の人人、炭団知らぬも少なからざるや。昔の家家には、炬燵や火鉢に欠かせぬ燃料とて、炭とともに炭団は常備品なりき。
真ん丸の炭団こそ、雪だるまの目に、つきづきしかりしか。
眉や鼻、口は、炭にて容易にととのひ得たりき。
このごろは、炭も炭団も家庭から姿消したれば、雪だるまの表情作る料の、なんぞのあるにや。
ペットボトル、空き缶、使用済み電池、ボールペン、みなみな顔のパーツには不向きなるぞかし。
道には、石ころや木切れの一つだに見出すこと、いと難し。
されば、雪だるまの、なべてのっぺらぼうなるも、げに理なるかとぞ。
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