3.11に粉砕されしバロン、奇跡の蘇生に成功す
3.11の強震にては、余の家の食器やグラス類とともに、棚の置物、飾り物、あまた落下して破損、粉砕されて、復元すること能はず、みなみな捨つるはめになりぬ。
いみじう心残りなるは、バロンのフィギュアの、余のアバターとてブログのプロフィルにも使いたりけるが、頭部の無惨にかき砕かれ、床に破片となりて散乱しつるは。
こは、ジブリの『耳をすませば』と『猫の恩返し』の両方に登場せる猫の男爵なり。
バロンのフィギュアは、これまでさまざまなる工房にて作られたるに、いずれも全体がポリエステル樹脂なんどの素材にて、サイズも10センチから15センチ程度のミニチュアなり。
余は、『耳をすませば』の中で、主人公の雫が地球屋にて最初に見たるバロン人形と、同じやうなる大きフィギュアぞ、長きに渡りて探し続けたりける。
ジブリ美術館や、オタク相手のフィギュアショップもありき回れるに、たまにあるも、ちさきフィギュアのみなり。
さるを、たまたま運のよきめぐり合はせにや、2004年のさる日、余はつひに探し求めつるバロンのフィギュア見つけたりて、この機会逃すことなくゲットするを得たりき。
高さは、映画とほぼ同じ37センチあり、背広、チョッキ、ネクタイ、帽子ぞ布地にて精巧に作られたる。
限定200体の箱入りにて、限定番号も書かれたり。
余は、砕かれたるバロン頭部の破片、細部に至るまで拾ひ集め、棚の一角にとりまとめ置きたるぞ。
震災から2箇月の経ち、ネットにてひたぶるに調ぶるに、このフィギュアの再び手に入ること、ゆめゆめなきことを改めて知れり。
そこで余は、壊れたる破片なむ接合して、バロンを蘇生させむと思ひ立てり。
無理を承知の作業にて、細やかなる破片を合はし行く道のりは、三次元ジグソーパズルにて、難航を極めたるぞかし。
破片と破片の合ふと思へば合はず。やうやう合ふ箇所、見つかれど、接着剤固まらぬうちに、外れて振り出しに戻る。
破片と接着剤とを右手に左手に、繋ぎつ外しつ格闘すること幾時ぞ、いでや、気がつけば、バロンの姿、元通りに蘇りたるは。
こは夢かとぞ。
何事もあきらめずに為すこと、これ成り難きを為すための唯一の道とこそ覚ゆれ。
かくて、元通りに成りたるバロン、何事も無かりけるやうに、ステッキを持ちて余の部屋にたたずみ居れり。
バロンの名前は、フンベルト・フォン・ジッキンゲン男爵。
戦争にて別れたる恋人の、ルイーズといふ名の貴婦人を、今日も探し続けると聞く。
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