大震災、二人のミキの魂が重なりて
大震災の日本にて、二人のミキの、あまたの人人の心、ひたぶるに揺さぶること、ありけり。
エンドウ・ミキとアンドウ・ミキ。はつかに一文字違ふのみなりて、年も一つ違ふのみなるを。
遠藤未希さん、24歳。南三陸町の危機管理課職員なりけり。
3月11日、防災対策庁舎2階の放送室から、防災無線にて、津波の襲来と避難を、町民に声のかぎり呼びかけ続け、自身は津波にぞ巻き込まれたりける。
「もはや無理なり。もう良しとなして、上がるべし」てふ同僚の声にも、マイク離すことのなかりけるとぞ。
冷静かつ緊迫感の伝ふるこの放送によりて、からうじて高台に避難すること能ひて、命の救われたる町民はその数を知らず。
去年結婚したばかりにて、今年9月には披露宴を行なふ予定なりけるとや。
もうひとりのミキ。安藤美姫。23歳。
3月に日本で開催さるるべくフィギュア世界選手権の、大震災によりて急遽、日程を遅らせてモスクワにて開催されたるに、困難の最中なる日本を背負ひて出場したり。
「被災せる人たちのこと思ひて臨みたる」てふ安藤は、気迫あふるる演技にて、五輪金のキム・ヨナ抑へて4年ぶりの世界女王に輝けり。
優勝直後のインタビューにては、涙もなく落ち着きたるに、翌5月1日のエキシビション終へた後は、涙あふれ来たりて止まらず。
安藤の、アンコールとて演じたるは、いでいで、モーツァルトの「レクイエム」なるぞかし。
冒頭の、氷上にて倒れ臥したるポーズは、まさしく大震災の犠牲者たちへの鎮魂の思ひなるらむ。
ミキの倒れ臥したるは、一瞬、もう一人のミキと重なり合へり。
レクイエムの調べとともに、ミキは立ち上がり、不死鳥のごと、リンクを縦横に翔びて舞へり。
強きメッセージ溢るるミキの舞ひは、いつまでも日本人の心に残るらむ。
おりしも、もう一人のミキなむ、昨2日、死亡が確認されたりとニュースの伝へたる。安らかに眠りたまはんことを。
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