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2011/10/17

何年ぶりかで柿を贖へば、億万年の時を駆ける

111017a秋深まりゆくけふ、柿をひとつ贖ひきたり。

余が柿を食らひたしと欲するは、数年ぶりのことなり。

柿を目の前に置きて、しばし眺めたり。

こは、派手派手しさの無き果物なるが、見入れば見入るほどに、セピア色の感覚覚ゆる。

ひとことにて柿を表現すれば「空」にして、その中に全宇宙を包みたるが如し。

柿の色は、経過したる時間の色なるぞかし。

大林宣彦監督作品の『時をかける少女』に、柿の出で来る歌ありき。

温室に水撒きながら、深町君(高柳良一)の歌ひ出せるやう。

♪ モモ、クリ、三年、カキ八年

芳山和子(原田知世)、合はせてデュエットにぞなれる。

♪ ユズは九年で成り下る ナシのバカめが十八年

これにて終はりかと思ひきや、深町君、さらに続けてかく歌へる。

♪ 愛の実りは、海の底
♪ 空のため息、星くずが ヒトデと出会って、億万年

和子は時折、ラララと合はせたりて、「素敵な詩なりや。われ、その歌にかやうなる続きのあること、知らざりけるは」と云ふ。

この挿入歌、『愛のためいき』てふタイトルにて、平田穂生作詞、大林監督自らの作曲によるものとぞ。

二人のデュエットぞ、映画における最も印象的なる場面なり。

柿一つ、時空を駆けて、秋の夜

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