移動販売車のお寺カフェにて、写経付きコーヒーぞ
雲ひとつなき秋晴れに誘はれて、すずろに街を歩けるに、西新宿の超高層ビル群見上ぐる寺の門前に、お寺カフェなる移動販売車、留まりて営業したるに出遭ふ。
尋ぬれば、この寺を基本駐在場所と定めて、時折、ほかの寺にも出向きて営業したるとや。
ロータスカフェなる名にて、ロータスとは蓮華の意味なるとぞ。
お寺に移動カフェとはあな珍しやと、メニューみれば、ソフトドリンク類中心にて、中に写経付きコーヒー500円とあり、余はこれを注文してみたり。
席は参道の両脇に、はつかばかりの卓2つと、簡素なる椅子のあるのみなり。
写経は、この場にて行なふもよし、家に持ち帰りて行ひて、後日、この販売車に持参するもよし、てふ。
本来は、墨を磨りて筆にてすべきものなれど、現代にては筆ペンにて書くも構わぬものなりと、説明さるる。
余は、通りすがりにたまたま立ち寄りたれば、筆ペンだに持たずして、まさかボールペンにて写経せむも罰当たりならむと思ひ、家に持ち帰りたり。
写経済みたるもの販売車に持ち来れば、いかにするらむと聞けば、そは日蓮宗の総本山なる山梨県身延山の寺院に送りて供養せむとよ。
このお寺カフェ、近頃、若き人たちの間にて高まれるてふ仏教ブームとも、あながちに無関係にてはなからむとこそ。
仏女(ぶつじょ)なんどと呼ばるる仏教好きの女子たちの、たまり場になりゆく可能性、ありやなしや。
さても、雨の日なんどは、屋根もなきこのオープンカフェ、いかにすらむと、人ごとながら気になりけるは。
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