階段踏み外して転倒し、贖ひたる陶器ぞ粉砕せる
けふは、新宿駅のコンコースから地下通路へ降りる階段を、何とはなしに歩きつつ、無意識のうちに足踏めば、あと1段あるを飛ばしたりけり。
あなや、と気付きたるも遅く、余の体は宙を舞ひ、もんどり打ちひっくり返りて、固き床に勢ひよく、どうと倒れぬ。
余の人生にて、これほど派手に転倒したりけるは、初めてのことにて、亀の甲羅の裏反したるが如く、無様な仰向けとなれり。
もこもこのダウンジャケットのおかげにや、すんでのところで後頭部を床に打ちつけざることこそ、幸ひなれ。
あまたの通行人ら、一斉に余を見やりて、ばつの悪きこと、このうへなし。
やうやう起き上がりつつ、まずはケータイの壊れざるかを確かむるも、とくにこぼちたる様には見へず。
そこで余が、はたと気付けるは、はつかに30分ほど前、陶器を贖ひて手に持ちたりけることぞかし。
売り場の人、丁寧に新聞紙に包みて、さらに袋に入れてくれたるに、その陶器は無事なりや否や。
袋、軽く振りてみれば、かちゃかちゃと音のするは、何事ぞ。
家に帰りて、袋の新聞紙広げたれば、オーマイガッド!
贖ひたるばかりの陶器、見事に砕け割れたるは。
しばし破片かき集めて眺むるも、覆水盆に戻らずよりもなほのこと、元に戻るはずのあろうかは。
されど、ものごとはみな、考へやうなり。
この陶器、余の後頭部の身代はりとなりて、割れてくれたにこそあなれ、と思へばまた、有り難きこと限りなきかな。
| 固定リンク
コメント
whetstone殿、かたじけのうござる。
裏にも表にも、歩き方謳ひながら、年の瀬に宙をころころ舞ふとは、お恥ずかしきことよのう。
あはれ、余には階段の歩き方大研究こそ必要ならめ。
とまれ、佳き年を迎へられむことを。
投稿: BANYUU | 2011/12/19 19:55
大変でござりましたな。
仰せの通り、かの陶器は身代わりでありましたでしょう。
しかしながら、裏の歩き方をご教示下さる貴殿が表の世界で、かくも華やかな御行動にお戯れになろうとは・・・。
にしても、命あってのこと。
新年に向けて十干十二支最初の龍をお元気で迎えられんことを祈りまする。
投稿: whetstone | 2011/12/19 19:26