3.11の記憶、壊れしままのガラスの天使
去年のあの日、東京にても震度5強の揺れに、余の部屋と云ふ部屋、棚の上、棚の中の物ども、いみじう落下しまくりて、食器やグラス類、あまた割れ毀ちたりき。
それらの落下物や破損物、いつしかやうやう片付きゆきて、いまは大震災の記憶残すもの、家の中にはほとど無くなりけり。
からうじて当時の記憶留めたるは、リビングの飾り棚なるガラス細工の天使なり。
背に丸き光の輪と羽根ありて、両手にてろうそく持ちたる姿なりき。
こは、ムラーノ製のベネチアングラスとぞ。
かの日の大揺れで、飾り棚のガラス細工たち、落下するもの倒れたるものさまざまにて、天使なむ、最もすさまじう破壊されたる。
後日、接着剤にて応急の修復せむとするも、あまりに粉々にうち砕かれたれば、もはや原型だに分からず、なすすべのあらうかは。
かくて、ガラスの天使ぞ、1年前と同じ破壊されたる格好にて、飾り棚に残しつる。
3.11の記憶留むる証人として、このままの姿に置きたるこそ、天使につきづきしとこそ。
毀ちたる天使は、ガラス細工よりも脆き現代文明に、無言の警鐘鳴らし続くるにや。
見るかげもなき天使の姿なむ、東京を震度7の直下地震襲ひたる時の、我らの姿なるやも知れぬ。
こは近未来への黙示録ならずや。
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