『ヒューゴの不思議な発明』を観て来たり
スコセッシ監督作品の3D映画『ヒューゴの不思議な発明』を観て来たり。
アカデミー賞の有力候補と話題になりて、作品賞こそ『アーティスト』に譲りたれ、撮影賞、美術賞、視覚効果賞、音響編集賞、録音賞の5部門にて受賞せらる。
余は『アーティスト』いまだ観ざりければ比べるべうもあらねど、『ヒューゴ』観たるのみの感想とては、こはまことに作品賞・監督賞授くるとも遜色なき稀有の作品にこそ。
詳しきストーリー書けぬも、まずもって驚嘆せむは、1930年代初期のパリの広大なる鉄道駅舎と、往き来せるあまたの人人、完膚なきまでにいみじう再現したる。
こはスコセッシ監督の完璧主義の真骨頂とぞ。駅舎の匂ひや空気さへ観客席に漂ひ伝はり来る心地す。
駅舎の大時計の裏側なる歯車群や、機械人形のダイナミックにして精緻なるしつらへも、いささかの手抜きあらず凝りに凝りて、観るだにおもしろし。
登場せるジョルジュ・メリエスなる人物、余は恥ずかしながら、てっきり物語上の架空の人物と思ひて観たるは。
あとからネットで検索すれば、こは実在の人物にて、世界初の職業映画監督かつSFXの創始者なるぞかし。映画にて語られたるエピソード、ほとど実話といふも驚きなり。
この作品は、メリエスはじめ草創期の映画制作に携はりけるすべての人人へのオマージュなるべし。
映画の底に静かに流るるは、登場人物たちそれぞれに背負ひたる第一次世界大戦の爪あとなり。
夢と奇跡は、二つの大戦に挟まれたるパリなればこそ、より一層のリアリティと哀愁を帯びて、観る者の心に迫り来るらめ。
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