殻付きのウニ贖ひて、食らふまでの棘との格闘
近くのスーパーの鮮魚コーナーにて、珍しきもの売りたるを見る。
いでや、こは針ネズミならむと覚ゆるほど、無数の鋭き棘に覆はれたるもの、1パックに2個なむ入りたる。
刺身用ウニ、千葉産とあり、まことにや、これにて300円なるは。
寿司屋にてウニの握り食らへば、1カン600円もせむこと脳裏に浮かぶ。
かくなるうへは、贖はでおられふものかは。
余はあとさきのことも考へず、喜び勇みて家に持ち来たり。
パック開けて、まず驚愕せるは、殻のいと固きこと、棘のいみじう鋭く尖りて、容易に掴むことだに能はぬことなるぞ。
慌ててネットにて、殻付きウニの食らひ方、調ぶれば、あなや、こは一筋縄にては行かぬものなるらし。
YouTubeなんどには、殻の開け方の動画もあり、それらに習ひて、調理バサミ、ピンセット、スプーン等、調へて、やおら開きにかかる。
棘の刺さらぬやう、ゴム手袋すべしとネットにあれど、あやにく無ければ、厚手の鍋掴みにて代用す。
殻の口を外し、殻を真っ二つに割りぬれば、ウニの黄色き実ぞ、姿を覗ける。
あまたの黒きワタ、丁寧にピンセットにて取り除き、実の部分なむ取り出し、塩水にて洗ふ。こは必ず塩水使ふべしとぞ。
かくして、2個の殻より得たる実の量は、小皿にほんの少量のみなり。
余の殻の割り方、悪しかりけむ、実ははらはらと崩れて形を成さず。
これに醤油をたらして食らふ。
一口、二口、その美味なること、何にか喩ふべき。
殻開けて実の取り出せるに40分を要し、食らひたるは20秒にて終はれり。
デパ地下なんどで売りたる生ウニの高価なること、価格の大半は殻開けて実を壊さずに取り出すための、手間賃なること、やうやう納得す。
それにしても、ウニの棘の硬さ、鋭さになむ、生存競争を懸命に生くる厳しさの、垣間見たる思ひする。
綺麗な薔薇には棘ありて、美味なるウニにも棘ぞある。
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