梅雨の七夕、新宿にトンボの大群現はる
けふは七夕なれど、梅雨空の下、朝から雨模様なり。
ふと空を見やれば、天空狭しとばかりに、無数の蜻蛉どもの右へ左へ上へ下へと飛び交へるは。
あな、都心にトンボの大群とは珍しや。
けふ一斉にかくも飛ぶは、いかなるにや。
そも、このトンボたちは、いづくより生まれ出でて、新宿に飛び来たるや。
神田川わたりか、はたまた多摩川くんだりか。
写真に撮らむとすれど、空中を動き続くるトンボをケータイにて撮るは、いみじう難きことなるぞかし。
当てずっぽうにてシャッターを切るうちに、何枚かにぞトンボの姿、写れる。
こは、何てふ種類のトンボなりや。
余が子どものころ、トンボはいたるところに飛び交ひたりき。
常にあまた飛びたるはムギワラトンボとシオカラトンボにて、アネサトンボ、アカトンボもよく見られたり。
数の少なきギンヤンマやオニヤンマの出現したる時は、男の子たちは総出にて追ひかけ走り、いかにもして捕まへむと必死なりき。
ガキ大将を先頭に、トンボ採りに奔走するも、ヤンマは滅多にトンボ網にかからず。
オニヤンマの採れたれば、地域の大事件にて、大人たちさへ見に集まれり。
虫カゴに入れられたるオニヤンマの、じたばたすることなく、堂々として眼中いっぱいに人間どもを見据へたるは、さすが名に恥じずとこそ。
オニヤンマやギンヤンマを見ぬやうになりて、久しうなりぬ。
飛び交うトンボの群れに、遠く過ぎ去りしあの時代を想ふ。
とんぼつり今日はどこまでいったやら 千代女
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