西安にて余に柿を与へし運転手のこと
秋深まりゆきて、スーパーの店頭には、あまたの柿の山積みに並べられたり。
いま盛りなるは刀根柿の種無しぞ。
瑞々しく、いみじう甘き柿にて、6個入りて398円は手ごろなり。
この刀根柿は、もともと渋柿の一品種なりけるが、刀根てふ園芸農家の庭園におきて、昭和34年(1959年)の伊勢湾台風の影響で突然変異を起こし、かくかくも甘き柿になりけるとかや。
柿を食らへば、余が8年前に、一人旅にて西安を訪れし時のこと思ひ出せり。
西安動物園にパンダの居れりとガイドブックにありて、余はタクシーに乗りて向かひてもらふ。
あなや、西安動物園は近きと思ひきや、タクシーはやおら郊外に出でて、猛スピードにて疾走を続くること、約30分余り。
推し量るに、動物園は最近に郊外に移りたるらし。
到着してみれば、広大なる駐車場には、観光バスや自家用車の姿あれど、タクシーは一台だにあらず。
余は帰りの交通手段のこと心配になりて、運転手に頼みてみたり。
「パンダ見たる後、余は(市中心部の)鐘楼まで戻りたし。されど、こはタクシーのあらぬは。汝、ここにて余を待ちてくれぬかは」
運転手、「承り候ふぞ。されば12時、園の入り口にて待ち候ふ」とて、名刺を呉れたり。
この会話なむ、余が一夜漬けにて覚へたる中国語と身振り手振りにて、辛ふじて通じたる。
あやにくパンダはこの日、公開されざりて、余は孫珸空のモデルとされたる金絲猴(きんしこう)てふ黄金色の猿なんどを見て、出口に戻る。
時間通りに運転手、笑顔にて待ちたりて、出店にて贖ひたるらし柿を一個、余に与ふ。
謝謝と礼を云ひ、再び西安の中心部まで戻りてもらふ。
柿食らひて思ひだすは、谷村新司そっくりの、あの運転手のことなり。
いま西安にて如何にし居るや。
| 固定リンク
| コメント (2)
| トラックバック (0)
諸諸の野暮用雑事のたぐひに忙殺さるる中、気がつけば、はや神無月も3日になりにけり。

最近のコメント